2012 Fiscal Year Research-status Report
MorphingFlapによる低騒音高揚力装置の研究
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23560956
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 泰寛 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80380575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻生 茂 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40150495)
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Keywords | 航空宇宙工学 / 高揚力装置 / 低騒音化技術 / Morphing |
Research Abstract |
本研究は、航空機の離着陸時の騒音低減に着目して、騒音低減と低抵抗特性を併せ持つ高揚力装置として、Flap-Edge-Noiseの低減を可能にする柔軟かつ連続的な形状変化を行うモーフィング技術を応用したMorphing Flapの騒音特性を明らかにするものである。本年度はまず、初年度の成果を踏まえて、フラップ内弦及び外弦部に連続的な変形部を有するMorphing flap舵角分布の生成を行った。 この連続的な舵角分布を実現するために必須な、滑らかな形状変形機構を有する、変形機構の部分模型を製作して可動部の確認を行った。これをもとに、初年度に作成した風洞試験模型の改修として、滑らかな外径形状を実現する柔軟な素材と変形機構を有するMorphing flap模型の製作を行った。さらに、音源探査計測精度の向上のために、マイクロホンアレイに改良を加えた。その結果、前年度よりも高い空間分解能を有する計測が可能となった。 以上の改良した風洞実験模型と音源探査計測システムを用いて、九州大学低騒音風洞において風洞実験を行い、Morphing flapの騒音特性及び空気力特性についての計測を行った。その結果、新しいMorphing flap形状では、従来のスロッテッドフラップで発生しているフラップ端部の騒音を低減することが可能であるとともに、翼胴結合部においての音源も低減することが可能であることが明らかとなった。 さらに、数値的研究では、3次元CFD解析を行い、舵角によるスパン方向の揚力分布変化と翼まわりの気流等、風洞実験では得られない流れ場の把握を行った。 また、これまでの成果をまとめて、国内及び国際学会において成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果を元に、新たなMorphing flap形状を創成し、音源探査精度を改良したマイクロホンアレイを用いて、低騒音風洞において風洞実験を実施した。その結果、前年度よりも詳細に騒音発生メカニズムを明らかにすることができるとともに、騒音低減に有効なMorphing flap形状を創出することができた。Morphing変形の実現性検討においては、実機での変形を考慮した基本的な可動機構を構築し、実機での成立性に向けた検討を深めることができた。また、数値解析においては流れ場の解明を進めることができた。以上より、実験、解析ともに十分な達成度がある。 なお、今年度実施予定であった5孔ピトー管による翼後流の気流計測について、当初予定していた5孔ピトー管では十分な空間分解能が得られないことが判明し、仕様の再検討を行ったため、次年度の計測となったが、十分にキャッチアップ可能の見込みである。 個々の研究要素について進捗の前後はあるものの、総合的に見て、当初の計画に対して現在まで研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を元に、騒音及び揚抗特性により優れたMorphing flap形状の設定を行い、系統的な把握のために形状のパラメトリックな定義を行う。 前年度までに製作した風洞実験模型を改修して、新たに創成した形状のMorphing flap形状の模型を製作し、騒音及び空力特性の計測風洞実験を行う。騒音の音源探査計測にあたっては、より高い周波数領域の騒音検出を行うためにマイクロホン配置の見直しを行い、詳細な騒音発生メカニズムを明らかにする。また、5孔ピトー管をトラバース装置で移動させることで、翼の後流での流れ場計測を行い、音源と気流の関係を明らかにする。 数値的研究では、Morphing flapまわりの実機レイノルズ数における流れ場解析を行い、風洞実験条件と実機飛行条件における現象の差異と実機での有効性の確認を進める。 また、Morphing flap機構を組み込んだ主翼変形機構模型を作成し、実機主翼での実現性の確認を行うとともに、必要なメカニズムや材質を明らかにすることで、実機に適用した場合の重量等へのインパクトを明らかにする。 3年間の成果をまとめて、成果報告書を作成するとともに、国内外の学会で成果発表や論文投稿、webページによる公表を行い、成果を社会に発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Morphing Flapの第3次形状の風洞実験模型を製作する。製作にあたっては、H23~24年度の風洞実験模型をベースとし、フラップ部とその取付・変形部に改修を加えることにより、新たに創成するMorphing Flap形状の実験を可能なものとする。また、騒音計測においては、高い周波数領域での音源探査を行うために、マイク配置を見直した直径の小さなマイクロホンアレイを製作する。さらに、変形機構の実現性確認のための可動翼全体模型を製作する。これらの模型製作や計測系構築にあたって、アルミ素材、木材、プラスチック素材、電子部品等の購入を予定している。 風洞実験計測にあたっては、翼後流の全圧速度ベクトル、フラップ端部の流れ場を詳細に計測するための5孔ピトー管と圧力計測系を導入する。その際、空間的な分布を計測するための3次元トラバース装置は風洞に既存の装置の取付部に改修を加えるものとする。 研究の実施にあたっては、大学院生による風洞実験や解析作業の補助を予定しており、その謝金を計画している。さらに、研究成果をまとめた成果報告書の作成、他の研究者との情報交換、国内及び国際学会での成果発表を行うため、その印刷費、旅費と参加登録料を計画している。 以上の研究経費を共同研究者である麻生茂教授とともに使用する。
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Research Products
(4 results)