2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波放電型イオンエンジンの内部プラズマの動的制御による性能向上に関する研究
Project/Area Number |
23560962
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Research Institution | Nishinippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹尾 良行 西日本工業大学, 工学部, 教授 (60206711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 推進・エンジン / 航空宇宙工学 / ロケット / 宇宙推進 / イオンエンジン / マイクロ波放電 |
Research Abstract |
イオンエンジンの推力は、放電室内で生成したプラズマを背景磁場で維持し、プラズマ中のイオンを静電グリッドで引き出し放出することにより発生される。従って、背景磁場により決定されるプラズマ形状は、静電グリットとの幾何学的な位置関係により、高効率にプラズマ内部のイオンが引き出されるよう最適化されている。マイクロ波放電型イオンエンジンでは、プラズマ生成にホットカソード等の電極を使用しておらず、それが故に長寿命が得られている。マイクロ波によるプラズマ生成には、マイクロ波と背景磁場によるECR(電子サイクロトロン共鳴)を利用しており、ECR領域の磁界中にマイクロ波で強電場を生成することによりプラズマが点火する。このプラズマの点火性を向上するためには、マイクロ波放出用アンテナの近傍にECR領域を生成することが有効であるが、一方では磁場形状を調整し静電グリッド全面に広がる高密度プラズマの生成がイオンエンジンの性能向上に必要である。 本研究では、マイクロ波放電型イオンエンジンの放電室内部の生成プラズマを、背景磁場の配位を動的に変化させることにより、プラズマ点火性とイオン引き出し効率を向上し、高性能イオンエンジンを開発することを目標としている。 本年度は、過去の研究において設計した5cm級のマイクロ波放電型イオンエンジンをベースとして可変磁場型のイオンエンジンの設計を行った。イオンエンジンの放電室外周部の背景磁場生成用磁石に加えて、可動プラズマ点火用磁石を放電質内部に配置した種々のマイクロ波放電型イオンエンジンの構造を決定し、各構造のイオンエンジンの放電質内部における磁場配意を有限要素法によって解析した。同時に、実験装置の設計を行い、可動磁石の移動方法および真空容器内部への動力電源(可変磁場生成用電力)供給方法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、マイクロ波放電型イオンエンジン内部の可変磁石配置を決定し、可変磁場型イオンエンジンの第一型を作製しプラズマ生成実験を行う予定であった。背景磁場の可変構造設計、磁場配位の計算および測定値との比較によるパラメータ調整の繰り返しに時間を要し、実験装置の完成が遅れている。早急に完成し、実験結果を蓄積したい。 なお、可変磁場型のマイクロ波放電型イオンエンジンの磁場配位等の一部について、学会で公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を基に背景磁場を変化させることが出来るマイクロ波放電型イオンエンジンの研究を以下の方策にて推進する。以下の研究遂行は、主に研究代表者および大学院学生と学部学生2名にて実施する。(1)イオンエンジンの製作: (1)イオンエンジン筐体部分は既存のものを流用し、磁場形成用のヨークを3DCADを用いて設計し、NCフライス等を用いて加工する。本製作には、本校の技術センターおよび専門の教員の協力を得る。(2)可動磁石の駆動回路を設置する。また、電磁石用の電源および冷却システムは、学生および技術センターで製作する。(3)本研究で開発中のイオンエンジンの効率的実験のためにガス導入システムの改良を行う。製作は本研究室でおこなうが、取付け治具などを一部業者委託をする。(2)イオンエンジンの性能試験: 開発中のマイクロ波放電型イオンエンジンを真空容器内に設置し、性能試験を実施する。データはパーソナルコンピュータに取り込み評価を行う。(3)マイクロ波放電型イオンエンジンの動作実験結果を評価し、性能を更に向上するための検討を行い、必要な改良を行う。(4)成果をまとめ国内外の学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオンエンジン(放電室)作製は、主に西日本工業大学の技術センターで行う。作製にはMo, Al, Feなどの種々の金属材料を使用し、加工のための工具が必要となる。また、イオンエンジンの磁場変化のアクチュエータまたは電磁石には冷却が必要となるため、これらの設置治具の製作を実施する。精度を要求される所は必要に応じて外部発注する。これらイオンエンジンの作製、改良は本研究の基本となるので、次年度は45万円をイオンエンジン製作費として使用する予定である。さらに、イオンエンジン出力測定、可動磁石機構および電磁石作製、制御のために電子回路部品15万円を使用する。イオンエンジンの性能実験の効率化のために推進剤導入システムを一部改良し、ArおよびXeを2系統のガス流量計を通して供給可能とする。本改良に20万円を使用する。 旅費については、平成24年度の調査・研究旅費として(5万円×3回)を計上し、研究遂行のために他研究機関での類似研究の調査、研究情報の交換を行う。成果発表旅費として韓国(ソウル7万円)、長崎(3万円)、マレーシア(15万円)を予定している。 研究遂行に必要な他の実験機材および実験消耗品等に必要な経費は、校費を使用する。
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Research Products
(2 results)