2011 Fiscal Year Research-status Report
ダイナミックインバージョン制御を用いた重力制御姿勢安定化飛行体の研究
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23560963
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岩田 拡也 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 主任研究員 (70356533)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 空中姿勢制御 / 重力振り子式安定 / 無人機 / UAV / 低速飛行体 / 中央集中操舵機構 / ロール安定化制御 / 無人飛行機 |
Research Abstract |
初年度となるH23年度はロール、ピッチ、ヨー3軸回転運動のうちの、ロールの姿勢制御関数について解明し、近似関数により必要な制御関数を導出した。重力振子安定式飛行機械のダイナミックインバージョン制御のため、ロール姿勢制御モデルの運動方程式の変形から導出した。平成23年度は姿勢角が小さい領域において解明を行った。制御則はコード化して小型組込み制御装置に搭載し動作解析を行っている。小型組込み制御装置の回路設計と製作も平成23年度に行った。同時に、実測データ収集のため、実験機の1/3スケールとなる小型実験機を製作した。実験機の設計は、3D-CADを用い、翼の特性を決定する骨組み材(スパー)の応力解析や変形解析から、設計の最適化を行った。実験機は、胴体部分が全て軽量アルミ合金、翼部分が軽量アルミ合金とポリエステル膜材で製作された。小型実験機の主な仕様は、翼スパン3m、翼面積2平方m、総重量3kg、推力1.5kgf。翼の設計では翼面積2平方m、スパン2.8m、アスペクト比2.3。空力特性設計では、後退角30°(翼スパー挟角120°)、上反角10°、捻下角10°、翼後縁上反角5°とした。製作を行い完成した小型実験機の試験を室内で再現良く行うため、直径900mmの送風ファンを3機並べて乱れた流れの送風を行う乱流送風装置を製作し、製作した小型実験機の翼の特性を計測した。乱流送風機装置による試験で、翼の剛性や揚力・抗力の迎角依存性の確認を行った。その結果、翼の下面にあるW字型のフレームの設置により、翼のロール剛性を確保しロール姿勢制御時の応答性が向上した。今後は、滑空機としてデータ収集後、小型実験機に電動推進器を搭載して、様々な運動の見える化試験を行う予定である。そこで空中運動の安定性を実証することができれば、この安定性を利用した空間移動ロボットの空中物流システムへの応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、実験装置の設計、製作と制御理論の構築が目標であったため、ほぼ予定通りの進捗であった。実験装置は、翼、アクチュエータ、制御回路、バッテリーからなる重力振り子安定式飛行機械であるが、制御回路の設計、電子制御基板の製作まで実施したため、予定を超えた進捗が得られた。また、C言語によるソフトウェアのコーディングも行い、センサ情報の高速読み取り(毎秒115200ビット)を可能にしたが、高速処理に必要なクロックを発生する水晶振動体の最適化に苦労したが、電子制御基板の制作まで行うことができた。ダイナミックインバージョン制御則の研究は、ロール、ピッチ、ヨー3軸回転運動のうちの、ロールの姿勢制御関数について解明し、近似関数により必要な制御関数を導出した。重力振子安定式飛行機械のダイナミックインバージョン制御のため、ロール姿勢制御モデルの運動方程式の変形から導出した。平成23年度は姿勢角θ1が小さい領域において解明を行った。制御則はコード化して小型組込み制御装置に搭載し動作解析を行っている。小型組込み制御装置の回路設計と製作も平成23年度に行った。実験機の設計は、3D-CADを用い、翼の特性を決定する骨組み材(スパー)の応力解析や変形解析から、設計の最適化を行った。翼は上反角は10度、後退角は30度で設計した。 実験機は、胴体部分が全て軽量アルミ合金、翼部分が軽量アルミ合金とポリエステル膜材で製作された。翼の軽量アルミ合金は、16mmφで1mm厚のパイプを使用した。小型実験機の主な仕様は、以下の通り。翼スパン:3m、翼面積:2平方m、総重量:3kg、推力:1.5kgf。翼の設計。全体設計。翼面積2平方m、スパン2.8m、アスペクト比2.3。空力特性設計。後退角:60°(翼スパー挟角120°)、上反角:10°、捻下角:10°、翼後縁上反角:5°。以上。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度の成果で姿勢情報が得られるようになったことから、これを演算して姿勢制御を行う制御プログラムの考案を行う。まずは、動力なしの滑空機として、凧のように糸で牽引して実験を行う。その実験方法の考案も重要な課題である。センサは、姿勢センサによる制御を実験した後、その結果に基づいて追加センサを選定し、追加する。産総研における1/1スケール実機サイズ実験機である空間移動ロボット2号機でのジャンプ飛行の成功は、空間移動ロボットの形態と飛行可能であることの見える化であった。次のステップは、空間移動ロボットの運動の見える化となるが、飛行運動の開発には、1/1サイズの空間移動ロボット2号機では実験規模が大きくなるために、1/3サイズの空間移動ロボット3号機を製作している。空間移動ロボット実証実験機2号機と、1/3スケールの小型実験機3号機の主な仕様比較を以下に示す。Width、2号機:10.5 m、3号機:2.8 m。Length,2号機:3.5 m,3号機:1.2 m。Height,2号機:2.5 m,3号機:1.24 m。Mass,2号機:95 kg,3号機:2.5 kg(滑空機)。Wheel,2号機:3 3号機:3。Wheelbase,2号機:2.0 m.3号機:0.85 m。Tread,2号機:1.8 m,3号機:1.15 m。Wheel radius,2号機:0.2 m、3号機:0.04 m。Battery 2号機:12V x 12Ah x4、3号機:6.0V x 1.5Ah。空間移動ロボット実証実験機2号機と1/3小型実験機3号機は、重量が1/3の3乗に比例すると考えると、まだ重量に1kg程の余裕があるが、この重量は推進器を搭載していない滑空機の状態である。推進器重量は1.6kg程あるために、更に16.5%の軽量化が今後必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は更に小型実験機の改良製作とソフトウェア研究に研究費を充当する。組込み回路基板、姿勢センサ、演算処理装置、電源、データ通信機、アクチュエータ、モータコントローラ、ジュラルミン材料などが小型実験機製作に必要な物品の調達を行い、小型実験機を実験するための機材の製作を行う。前年度は、乱流送風機の製作を行ったが、次年度はフィールド試験による実験を目指す。実験機の改良設計は、3D-CADを用い、翼の特性を決定する骨組み材(スパー)の応力解析や変形解析から、設計の最適化を行う。改良型小型実験機は、胴体部分が全て軽量アルミ合金、翼部分が軽量アルミ合金とポリエステル膜材で製作する。翼の軽量アルミ合金は、次年度からは8mmφで0.8mm厚のパイプの使用も検討する。推進器を搭載すると、重量が1.6kg増加するために、更に16.5%の軽量化が今後必要である。製作を行い完成した小型実験機の試験を室内で再現良く行うため、直径900mmの送風ファンを3機並べて乱れた流れの送風を行う乱流送風装置を製作し、製作した小型実験機の翼の特性を計測する。乱流送風機装置による試験で、翼の剛性や揚力・抗力の迎角依存性の確認を行う。翼の下面にあるW字型のフレームの更なる改良により、翼のロール剛性を向上させロール姿勢制御時の応答性を高める。今後、ダイナミックな運動の見える化を目的とした3号機は、実機の1/3サイズの実験機として改良を重ね、翼の形状は、上反角は10度、後退角は30度で再設計した後、姿勢制御のためのロール剛性の向上を目指す。また、滑空機としてデータ収集後、3号機に電動推進器を搭載して、様々な運動の見える化試験を行う予定である。そこで空中運動の安定性を実証することができれば、この安定性を利用した空間移動ロボットの空中物流システムへの応用が期待される。
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