2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560970
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
勝井 辰博 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (80343416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 朝哉 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10359127)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ROV / クローラ / 海洋資源 / 海洋探査 / 海洋利用 / CFD |
Research Abstract |
本研究はクローラ型ROVの実海域走行特性を精度よく推定する手法を確立することを目的とし実施されたものである。本年度実施された内容は大きく分けて2つである。第1はCFDを用いて海底走行時のクローラ型ROVに作用する流体力の評価手法を確立したことである。クローラ型ROVは複雑形状である上、海底を走行するため実験による正確な流体力の測定が難しいが、CFDを用いることによって海底影響を考慮したROVに作用する流体力特性を精度よく推定できることを示した。定常水平走行時のROVに作用する抵抗は海底の影響をあまり受けないのに対し、揚力は海底の影響を大きく受け、海底を走行する場合の揚力は無限流体中に比べて大幅に大きくなることが分かった。この差は、走行速度、ROVの形状に依存し、CFDが海底走行時のROVに作用する流体力を評価する上で有用であることを示した。CFDによって推定された海底走行時のROVの流体力特性を援用し、報告者がこれまでに開発したクローラ型ROVの走行特性評価法に基づいて、通常走行条件(ウィリーを起こさずクローラが完全に接地した状態で走行するための条件)を調査したところ特にフルード数が大きな場合に、通常走行可能条件がこれまでの推定に比べ大きく減少することが分かった。第2は、フリッパー式クローラ型ROVの段差踏破性能評価法の開発と検証である。後部にフリッパー式クローラを有するROVが単純段差を踏破するための条件は、クローラ後端に作用する垂直抗力が段差踏破時にROVの前進とともに単調減少して0に達することと等価であると定義し、各種走行条件に対して段差踏破の可否を推定して実験結果と比較した。その結果、本研究で示した段差踏破性能評価法は妥当な精度でROVの段差踏破の可否を推定できることが分かった。また、後部フリッパーを下方に振り下げることにより、段差踏破性能が向上することも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた、CFDを用いたクローラ型ROVに作用する流体力の評価については、計算用ROV形状モデルの作成、計算格子の作成、妥当な計算条件の検討、計算の実施、計算結果の可視化、計算結果も評価をすべて完了している。計算結果については、無限流体中を曳航したROV実機に作用する流体力の計測結果と比較し妥当な精度で計算で実施できていることを確認している。また、海底走行時には過大な揚力が作用し、ROVの走行特性に大きく影響を与えることを見出している。さらに、フリッパー式クローラ型ROVに関して、クローラ後端に作用する垂直抗力の変化に着目した、段差踏破性能評価方法を新たに開発し、模型実験によってその有効性を確認している。以上のように、本年度の研究によって、当初予定されていた研究目的はおおむね達成できているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、クローラ型ROVの実海域走行特性評価のために、2つの項目に着目し研究を実施していく予定である。第1はROVに作用するケーブル張力がROVの走行特性に与える影響の評価である。ROVは母船とケーブルによって接続されているためケーブル張力の影響をうけ、場合によっては転倒に至る。カテナリー理論やランプドマス法等を用いることでケーブル張力の影響を評価し、既存のROVの走行特性評価法に組み込むことにより、ケーブル影響を考慮したROVの走行特性評価を実施する。第2はクローラと接地面の相互干渉を考慮したROVの推進力の評価である。ROVは様々な条件下にある海底面上をお走行するため、クローラと接地面の相互干渉によって推進力が大きく変化する。そこでクローラの運動、接地面の摩擦特性を考慮してクローラに作用する推進力の大きさおよび着力点の位置の時間変化を求める方法を開発し、ROVの走行特性評価法に組み込むことで総合的なクローラ型ROVの実海域走行特性評価法の構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用については、物品費としては、ROVの走行特性解析計算用パーソナルコンピュータ、解析用ソフトウェア、模型試験用部品、模型試験用小型水槽関連品の購入が予定されている。旅費に関しては、国際会議での成果公表1回、国内打ち合わせ会議2回程度の支出を予定している。謝金についてはデータ整理の一部を依頼し、それに充てられる予定である。その他としては、国際会議登録料、論文投稿料の支出が予定されている。
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