2011 Fiscal Year Research-status Report
深海環境および資源探査用化学発光方式硫黄化合物センサーの開発
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23560976
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤森 啓一 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (70319573)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 深海探査 / 化学発光 / 硫化水素 |
Research Abstract |
化学発光測定における基礎的検討としてスペクトル測定を行った。硫黄化合物と過マンガン酸によって生じる化学発光は740 nmに発光を示すマンガン由来の発光と400~600 nmに生じるピークが存在することが再確認できた。以前の測定装置は精度が悪く、硫化水素の化学発光では400~600 nm領域に発光があるか断言できなかった。しかし、今回の測定では硫黄を含む化合物の化学発光ではこの領域にピークを持つことを実証できた。今回の測定では、ニ亜硫酸、チオ硫酸、システイン、グルタチオンと過マンガン酸による化学発光スペクトルを得ることができた。特に、カプトプリルの400~600 nmのピークが他の硫黄化合物と異なることがわかった。 Tb(III)錯体を増感剤として使用した場合、以前に研究を行っていたCAPSを利用した場合に比べ、約100倍の分析感度を得ることができた。CAPSの場合の硫化水素の検出下限は0.17 μMであったのに対し、 Tb(III)錯体を利用した場合で100 nM以下の硫化水素の測定が十分に行えることがわかった。しかし、調製した直後に測定しても硫化水素濃度が100 nM 以下では標準溶液が不安定であるために正確にどの濃度まで測れるか不明である。 硫化水素を測定するのと同じ化学発光系でTb分析の検討を行った。配位子の錯形成能が低いためにTbの検量線が直線にならないことがわかった。Tbの分析を化学発光で行うには、錯形成能が高く、過マンガン酸と硫黄化合物の化学発光の光を吸収し、中心金属のTbにエネルギーを効率良く伝える配位子を探索する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過マンガン酸と硫黄化合物化学発光スペクトルについては非常に正確に迅速に測定できるようになり成果がでるようになってきた。化学発光のスペクトルについては分析方法を構築する際、欠くことのできない情報である。 深海用硫化水素分析の研究は順調に進んでいる。CAPSを使用していたときに比べ、かなりの感度上昇がみられている。また、CAPS同様に温度の影響が低いことから、熱水に含まれる共存成分についての影響も低いと期待できる。 それに対して、Tbの分析は、ほとんど進展が見られない。しかし、この研究は本課題の附属的なテーマである。当初から有効な配位子を見つけることのみが測定を可能にすることは予想されていたので、想定の範囲内である。以上を勘案すると、研究進行は当初の計画通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
熱水由来の金属イオンの妨害を検証する添加実験や実海水への硫化水素添加回収実験を行い、Tb(III)錯体の増感化学発光法を利用した硫化水素分析法の検証を行う。本分析法は硫化水素以外の亜硫酸やチオ硫酸などの還元性硫黄酸化物も検出する。熱水噴出孔から放出された硫化水素は海水中の溶存酸素によって酸化され、最終的に硫酸となる。この酸化過程において、各種還元性硫黄酸化物が生成すると考えられる。しかし、硫酸への酸化過程は複雑で解明されていない。我々は溶存酸素と硫化水素から生成する還元性無機硫黄化合物の化学発光への寄与を検討する。また、銅などのカラムを作成し、硫化水素を除去することにより還元性無機硫黄化合物を測定する。また、亜硫酸酸化酵素などを利用することにより分別定量を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度にはHPLCを備品で購入する。硫化水素は溶存酸素によって酸化される。硫黄酸化物にはチオ硫酸や亜硫酸などの安定で標準物質が得られる物から、ポリチオン酸のような標準物質が手に入り難い物質まで多種存在する。熱水周辺での硫化水素から生じる酸化生成物を同定することは不可能である。そのために、模擬海水を使用して、硫化水素から生成する主要硫黄酸化物中間体の測定をHPLCで行う予定である。過マンガン酸カリウムや使用する無機硫黄化合物は安価なものが多いので、消耗品についてもHPLC関連部品を中心に購入する。
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Research Products
(1 results)