2013 Fiscal Year Research-status Report
バイオマスの急速熱分解により得られるバイオオイルからの水素製造プロセスの開発
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23560982
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩佐 信弘 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30223374)
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Keywords | 水素 / バイオマス / 水蒸気改質 / エタノール / 一酸化炭素選択除去 |
Research Abstract |
本研究では,バイオマスを触媒を用いて水素に変換するプロセスの開発を行った。これまでの研究において,バイオオイルの主成分の一つである酢酸からの水素製造に対して,ニッケルを含有するスメクタイト粘土化合物が高い活性および選択性を示すことを明らかにしてきた。本年度は,バイオマスからの水素製造として新たにバイオマスから容易に合成可能なエタノールを原料とする水素製造について検討した。また,改質により生成した水素を燃料電池に利用する場合は,改質ガス中に含まれる一酸化炭素による電池の白金電極の被毒が問題となるため,改質ガス中から選択的に一酸化炭素を除去する技術についても検討した。それらの結果を以下に示す。 エタノールからの水素製造においては,ニッケルを含むスメクタイトが酢酸からの水素製造と同様に高い水素収率を与えることを明らかにした。ニッケルをスメクタイトの合成時に導入した触媒およびニッケルを含まないスメクタイトを合成してからニッケルを含浸法により導入した触媒を調製して,ニッケルの導入方法が反応特性におよぼす影響について検討した。その結果,これらの触媒の活性にはニッケルの導入方法の違いはほとんど認められないが,安定性はスメクタイトの合成時にニッケルを導入した触媒が優れていることが明らかになった。 一酸化炭素の除去においては,一酸化炭素のみを選択的に水素化して除去することを試みた。この方法では,改質ガス中に含まれる二酸化炭素の水素化を抑制することが重要となる。ニッケルを含むスメクタイトは,一酸化炭素の水素化活性は金属酸化物にニッケルを担持した触媒よりも若干低いものの選択率は格段に高く一酸化炭素のみを選択的に水素化により除去できることを見出した。またスメクタイトに白金を微量添加することにより,活性が著しく向上して,0.5%の濃度の一酸化炭素を50 ppmにまで低減可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオマスを水素に高効率で変換して燃料電池へ応用することを目的に,本年度は新たにエタノールからの水素製造および改質ガスから選択的に一酸化炭素を除去する技術について検討した。 エタノールはバイオオイルの主成分の一つであるとともに水蒸気改質においてはバイオエタノールを精製せずに使用できる利点があることから,その応用範囲は広い。エタノール水蒸気改質に対してもニッケルを含むスメクタイト触媒が高い活性および選択性を有することを見出した。ニッケル含有スメクタイトが酢酸のみならずエタノール水蒸気改質においても有効な触媒として作用することは,この触媒が水素源としてどちらも使用可能であり,その応用範囲が広がると考えられる。 一酸化炭素の除去は燃料電池システムにおいて重要なプロセスの一つである。改質ガスには一酸化炭素,二酸化炭素,水素,水蒸気が含まれるが,ニッケル含有スメクタイトは二酸化炭素の水素化がほとんど起こらず,選択的に一酸化炭素のみをメタンへ水素化して除去出来ることを見出した。また,白金などの貴金属をスメクタイトへ添加することにより,高い選択性を維持したまま活性が著しく向上して,一酸化炭素の濃度を50 ppm以下にまで低減できることを明らかにした。本反応に対してもニッケル含有スメクタイトが優れた性能を示すことは,改質による水素製造と一酸化炭素の除去を同じ反応器で進行させることが可能であり,システムの簡略化に寄与できると考えられる。 以上の結果より,本研究は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において,ニッケルを含むスメクタイト触媒がエタノールからの水素製造に対して優れた性能を有すること,ニッケルの導入方法により活性に大きな差異は認められないが,安定性はニッケルをスメクタイトの合成時に導入した触媒のほうが優れていることを見出した。 これらの結果を踏まえて,次年度はニッケルの導入方法の違いにより触媒表面でのニッケルの分散状態がどのように異なるのかについて検討する。具体的には水素や一酸化炭素の化学吸着により表面に露出しているニッケル原子の定量,X線回折や光電子分光(XPS, AES)などによりニッケルの結晶構造や電子状態を調べて,活性点の構造を明らかにする。 また一酸化炭素の選択的除去においては,ニッケル含有スメクタイトへ微量の白金を添加することにより活性が向上することを見出したので,他の貴金属(ロジウム, ルテニウム, イリジウム, パラジウムなど)の添加効果について検討するとともに貴金属添加による活性向上の要因を明らかにする。 またバイオマス資源の有効利用として,バイオディーゼル燃料の製造時に生成するグリセリンからの水素製造についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にバイオマスから容易に合成されるエタノールを原料とする水蒸気改質反応について検討した結果,ニッケルを含有するスメクタイト触媒が高い活性および選択性を有することを見出した。エタノールはバイオオイルの成分の一つでもあり,本研究課題のバイオオイルからの水素製造においても重要な反応である。そのため,研究計画を一部変更して,エタノール水蒸気改質について検討を行うこととしたため未使用額が生じた。 次年度は薬品,高圧ガスやガラス器具などの消耗品費に200,000円,国内や外国で開催される学会において研究成果を発表するための旅費に250,000円を使用予定である。
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Research Products
(1 results)