2012 Fiscal Year Research-status Report
地殻物質-熱水間元素分配実験および野外調査に基づく熱水性金属鉱床の生成機構の解明
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23560989
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
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Keywords | マグマ / 熱水 / 元素分配 / 塩濃度 / 花崗岩 / タイ / 錫 / 黒雲母 |
Research Abstract |
2012年度では、花崗岩質マグマ-熱水間および輝石-熱水間における元素分配実験とタイに産する花崗岩の調査・研究を行った。 マグマ-熱水間元素分配実験では、2012年度はタイの花崗岩に対して0.5~3.0mol/lのNaCl水溶液を用いて行った。実験条件は1.5 kb、860℃とし、反応期間は3日とした。各元素のマグマと熱水間における元素分配係数は、昨年度と同様にCa、MnおよびFeに関してもNaおよびKと同様に塩濃度に対し1次関数的に増加する傾向がみられ、従来の結果とは異なる結果が得られた。2価金属に対しては塩素濃度の2乗に比例して分配係数が増加することが言われているが、今年度の実験でもこのような傾向は認められなかった。 輝石と熱水間における希土類元素の分配実験では透輝石を出発物質とし、La、Nd、Gd、Ho、Ybの塩化物水溶液を用いて700℃および800℃、1kbの条件下で行なった。実験の結果、透輝石に入る希土類元素が、X線マイクロアナライザの検出限界以下であるとともに、セライトと思われる希土類元素を多く含有する鉱物が生成したため、透輝石-熱水間における元素分配をうまく求めることができなかった。 タイの花崗岩体に関しては、チョンブリからチャンタブリにかけて分布する東部および中部岩体を対象に調査・研究を行なった。東部岩体の花崗岩は、イルメナイト系、Iタイプに分類され、角閃石を伴う。他方、中部岩体は、イルメナイト系、I~Sタイプに分類され、白雲母が伴うことが多い。いずれの岩体も希土類元素のパターンにおいてEuの負の異常が認められた。黒雲母の組成に関しては、東部岩体で、全Al量が小さく、2.1~2.5であり、日本のPb-ZnおよびMoを伴う花崗岩類と同様な値を示した。他方、中部岩体は、全Al量に関しては高く2.5~3.4であり、日本のSnを伴う花崗岩類と一致する値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
花崗岩質マグマ-熱水間における元素分配の塩濃度依存性実験に関しては、実験に用いる花崗岩を変更して実験を行なったが、いまひとつ実験精度の高い実験を行なうことができなかった。そこで、2013年度では、実験に用いる花崗岩を替えるとともに、人工的な混合物を実験に使用することを考えている。なお、実験精度に関しては、液相の分析に用いているICPが新しいものに更新される予定であるので、このことによる分析精度の向上が期待される。また、鉱物-熱水間における希土類元素の分配実験に関しては、2012年度実験対象とした輝石において、希土類元素がほとんど固溶しないとともに、他の鉱物が多く生成されることが判明したので、2013年度ではザクロ石等の他の鉱物を用いて実験することを予定している。 タイの花崗岩調査に関しては、2011年度の南部での調査に引き続き、ほぼ予定通りに調査・研究を進めることができたとともに、予想通りの結果を得ることができた。2013年度は、当初の予定通りタイ北部に分布する花崗岩類を対象として調査・研究を行なう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度では、2011年度および2012年度に実験を行った試料とは異なった花崗岩試料を用いて、花崗岩質マグマ-熱水間元素分配に対する塩濃度依存性実験を行う予定である。また、人工的な花崗岩組成を持つ薬品混合物を用いて実験することも考えている。 これに加えて、今年度実験がうまくいかなかった透輝石に替えて、ザクロ石を用いて塩化物水溶液間における希土類元素の分配実験を行なう予定である。 タイの花崗岩に関しては、北部の花崗岩を対象に調査を行なう予定である。対象岩体は今年度と同様の東部岩体および中部岩体であり、ピサヌローク周辺に分布する花崗岩類を調査する予定である。また、これに加え、日鉄鉱業が隣国であるカンボジアにて探査を行なっているプノン・バセットの銅・モリブデンを伴う花崗岩体のサンプルを入手できる予定であり、この岩体に対しても各種分析を行ない、タイの花崗岩および日本の花崗岩との比較を行なう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の予算は、昨年度の繰越金を含めて863,107円である。 2013年度での予算の使用予定は次の通りである。高温高圧実験に使用する金パイプの再生加工に250,000円を充てる。また、高温高圧実験およびその合成物の分析に必要な消耗品(薬品、研磨剤、耐水研磨紙、ダイヤモンドペースト代、液体窒素など)として263,107円を使用する予定である。 2013年度においては、引き続きタイの花崗岩調査を実施するが、その調査費用としてレンタカーの使用料を含めて350,000円を予定している。
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Research Products
(2 results)