2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ計測のためのエックス線検出器の高計数率化とノイズ耐性強化の研究
Project/Area Number |
23561001
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
武藤 貞嗣 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40260054)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Research Abstract |
平成23年度後半に研究代表者所属の核融合科学研究所大型ヘリカル装置に於ける研究代表者の測定によりタングステンのL特性X線(10 keV)が発見されたため、当初案のベリリウム(測定領域0.8keV ~ 8.0 keV)を急遽アルミニウムに切り替えることで測定領域を3.0 keV ~ 30 keVまで対応可能とした。また、タングステンの特性X線は強度が弱いため500 μm以上の厚さを有する半導体受光素子を多素子型検出器として用いることで量子効率を100 %まで引き上げた。従って、量子効率は当初案の5 %と比較して20倍となった。また、アルミニウムの採用により市販ベリリウムウエファーの限界半径の2.4倍にできたので更に明るさを5.8(2.4の2乗)倍にできた。時間分解能としては、アルミニウム円盤の高トルク回転域として当初案以上の1分間当たり7000回転を確保。更に、メーカーの好意により現在最高10000回転を目標に調整中。光学系全体の明るさが当初案の100倍以上となったため、時間分解能向上にも努めた。また、回転エンコーダーについては、モーターコントローラーからのパルス出力を信号用に直接取り込むことで高速回転であっても確実にモーター回転角を測り出すことが可能になった。10000回転に対応できる外付け高速回転エンコーダーの調達は本研究の補助金費では困難であったため最も大きな問題点を解決できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実現するエネルギー分解能は数値演算を行なう計算機の桁数の範囲で受光光子数の桁に比例する。なぜなら本研究でスペクトルを解析するために必要とするメリン変換は、指数関数の重ね合わせとなる吸収板を透過した光強度の厚さ変化を数値演算に適した正弦関数の重ね合わせに変換する際、横軸は受光光子数の桁に対応し、誤差を含む桁以降に鋭いスパイクを発生させ、フーリエ逆変換が可能な領域を狭めてしまうからである。例えば10桁目に誤差があると規格化した横軸上の±10がフーリエ逆変換可能領域である。5桁目に誤差があると±5が逆変換可能領域であり、エネルギー分解能は10桁目に誤差がある場合と比較して半分に減る。本研究では当初案に比べて測定領域の下限が0.8 keVから3.0 keVと高エネルギー側にシフトしたものの光学系全体の明るさが2桁大きくなり、不純物の特性X線強度の時間変化を測る際の見積もり上の受光光子数3桁を5桁にできたのでエネルギー分解能が1.7倍(= 5/3)となり、当初原子番号が2つ以上離れた元素を入射する予定を原子番号が隣り合う元素の入射も可能になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究に於ける最大の課題は、実際のエネルギー分解能を評価することである。エネルギー分解能は受光光子数の対数に比例するため輝度が桁違いに高く時間安定性に優れた光源が必要である。平成24年度は高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設での実験を開始する。また、測定領域が高エネルギー側にずれたたため当初案のBL-16からBL-14Cにビームラインを変更した。BL-14Cは縦型超伝導ウィグラーにより、6 keV ~ 80 keVまでの高輝度光を得ることができる。エネルギー分解能は数値演算を行なうコンピューターの性能にも依存するが市販のPCを利用しても最高8桁の計算ができるのでアルミニウムでは3 keV ~ 30 keVの領域で最大E/ΔE = 26を確保できる。BL-14Cの高輝度光を利用すれば10桁分(倍精度の8桁目に誤差が発生しない受光光子数)の光子数を蓄積するのに最短2分であるが、光軸の径を1/10にまで更に絞り明るさを1/100にしたとしてもストレージリングのビーム安定性が1 h単位であることを利用すれば光軸上の吸収板の厚さ誤差を1/10にして理論値により近い値を得ることができると期待している。平成23年度に光学系全体の明るさを100倍以上にできたことで測定時間を2桁縮めることができたので実験の実現性がより高まった。実験に必要な光学系は平成24年度6月に完成する。10月までに後段の検出器となる半導体のPCによる制御を達成し、11月から放射光による実験を開始する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で発生した次年度使用額分は、放射光によるエネルギー分解能評価に必要な光学系として既に発注済みであり、平成24年度6月に完成する。発生状況としては、当初案のベリリウムの測定範囲の上限がタングステンのL特性X線(10 keV)に届かなかったことが最大の理由である。本研究では、吸収体となる円盤を高速回転させるためその円盤の大きさ、比重、厚さ変化を考慮して回転駆動機構を設計しなければならない。当初、ベリリウム円盤を回転させる設計であったが、大きな半径が取れるアルミニウムの特性を生かすと光学系の明るさを2桁増やすことができることがわかったため、発注寸前の状態であったベリリウム用とは異なる駆動機構を設計した。設計上、アルミニウム円盤の重さを支えるために高トルクを発生する高周波スピンドルを使用すべき状況ではあったが、そのスピンドルのみの価格が本研究の初年度の補助金費と等しいため、スピンドルよりも価格の安いパルスモーターのメーカーに製品仕様の確認を取りながら再度設計を考え直し、最終年度の不純物輸送研究に必要な性能を確保しつつ補助金費に見合う設計に再度変更した。具体的には、真空チェンバー兼高速回転モーター固定架台、回転導入器、アルミニウム円盤、タングステンピンホール、回転角TTLレベル12 bit出力回路が本研究で発生した次年度使用額分で製作される。次年度に新規で受け入れる補助金については、受光部の多素子型半導体と信号回路の作成を予定している。受光部で発生した電子パルスを増幅するメインアンプを高速読みだしが可能なLSIとして設計作成し、スペクトル解析を行なうメリン変換についても桁数20桁以上の専用数値演算プロセッサーとして作成し、アナログデーターを1基板上でデジタル化するデーター処理系の構築を行なう準備をしている。
|