2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘリカルプラズマにおける電場の自律的振動と輸送障壁に関するダイナミクス解析研究
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23561002
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
登田 慎一郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (60332186)
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Keywords | 核融合プラズマ / 閉じ込め / ダイナミクス / 輸送 |
Research Abstract |
ヘリカルプラズマにおいて,ヘリカルリップルに関係した新古典輸送により電場の径方向分布が決まる。ヘリカルプラズマで径電場の分岐が起こり,結果として得られた径電場における強いシアによって輸送障壁が形成される。径電場の時間発展においてリミットサイクル現象がヘリカルプラズマにおいて実験観測されている。用いた輸送モデルは密度,電子温度,イオン温度と径電場の時間発展拡散方程式からなる。本研究ではLHDに最適化し,低衝突領域から高衝突領域まで適用出来る新古典拡散係数のデータベースDGN/LHDを用いて,輸送解析を行った。この場合も二つのプラズマ状態の間を振動する径電場のリミットサイクルをシミュレーション結果として示すことができた。電場の周期的な振動現象が起こるパラメータ領域についても調べ,以前の解析結果と比較した。本研究の解析では,電子温度とイオン温度の比が大きいときも,電場の振動現象を得ることができる。この点についてLHDの実験結果と矛盾しない結果を得ることができる。 エッジ領域においての密度限界付近での密度振動現象を説明するために,電子温度の時間発展方程式に不純物イオンによる放射損失の項を加えた。輸送モデル方程式に密度発展方程式を新たに含めた。不純物として炭素を選んだ。輸送または放射損失が優位な場合の2つの時間的に定常な状態を示した。放射損失が優位なときは,放射損失はr/a=0.8付近の低温の所で強いピークを持ち,完全にデタッチしたプラズマ状態になる。次に径電場,密度,電子温度とイオン温度の時間発展を解析した時の物理量のダイナミクスを調べた。時間発展の中でr/a=0.8で輸送が優位な状態から放射損失が優位な状態へ遷移が起こる。遷移後,プラズマは定常状態になり放射損失が優位になる。またr/a=0.5では遷移は起こらず,輸送が優位なプラズマ状態が定常になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における平成24年度の研究目的は,電場の振動現象中の電子内部輸送障壁を精密な新古典輸送データベースにより予測することであった。実験で観測されているパラメータ領域でシミュレーション結果により再現することができ,研究目的を達することができた。その研究成果について学会発表を行った。また,プラズマエッジ付近での電場の振動現象は予測することができなかったが,電場の振動現象を実現するための,不足していた物理メカニズムを特定することができた。したがって「(2)おおむね順調に進展している。」の評価を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
電場の振動現象が予測されるパラメータ領域は,どの異常輸送モデルを用いているかに強く依存する。これまでの研究では,特定の不安定性が駆動されていると仮定して,乱流輸送係数を決定していた。しかし、輸送係数を決めるには不安定性の励起条件を評価し,かつその飽和レベルを求める必要がある。その手始めとして,乱流輸送係数をジャイロボーム係数と無次元関数の積とする。無次元関数を決定するために不安定性の成長率を計算する。そして不安定性の温度勾配長に対する依存性を精査する。また帯状流の振幅に対する乱流輸送係数の依存性を調べる。それにより,乱流輸送係数の温度勾配長と帯状流振幅に対する依存性を求める。そのモデル化された乱流輸送係数を用いて輸送コードの解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費は主に,研究の成果を報告し,共同研究者と議論するための国内,外国旅費に使われる。 )線形成長率の波数依存性を調べることが,乱流輸送系数のモデル化には重要である。九大応力研では,乱流計測シミュレータにより乱流の揺動振幅の波数依存性を調べている。この依存性との相違点を調べることで、乱流輸送の理解に大きく貢献することが期待できる。その議論のための核融合科学研究所と九州大学応用力学研究所との間の出張旅費として使用される。また,新規の研究成果を海外,国内の学会で報告するために,旅費として使用される。 研究成果発表資料をまとめるのに必要なソフトウェアやパーソナルコーンピューター用の消耗品(ディスクやプリンタで使う消耗品等)を購入する予定である。 今年度,当初予定よりも少ない国内出張の数で,おおむね順調に研究を進展させることができた。次年度においてその成果を報告し,他の研究者と議論する出張に研究費を使う。
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