2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘリカルプラズマにおける電場の自律的振動と輸送障壁に関するダイナミクス解析研究
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23561002
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
登田 慎一郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (60332186)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 乱流輸送 / 簡約化モデル / ジャイロ運動論解析 / プラズマダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
大型ヘリカル装置(LHD)での高イオン温度放電(#109081)におけるイオン温度勾配(ITG)不安定性について考察した。線形成長率と帯状流崩壊時間の式を線形ジャイロ運動論解析から求めた。ダイナミクスを解析できる輸送コードを使って、モデル化したイオン熱拡散係数を適用し輸送ダイナミクスを考察した。イオン温度分布の初期条件として、LHD高イオン温度放電 (#109081) においてt=4.2sでの実験結果を用いた。磁場配位は初期状態で固定している。また, 密度、電子温度分布も初期状態で時間的に固定している。イオン温度分布について、拡散方程式を時間発展解析することにより考察した。イオン加熱入力分布を初期状態で計算し、時間的に固定する。全径方向領域で負の径電場が得られる。径電場分布は時間的に固定する。初期状態では、ITGモードはほぼプラズマ全領域において安定である。定常イオン温度分布のシミュレーション結果を考察した。イオン温度分布の解析結果では、実験結果と比べ、高い温度を示している。ITGモードは規格化した小半径が0.18<r/a<0.42の領域で不安定化する。しかしながら新古典輸送は、ITGモード乱流による輸送と比べて優位である。 #109081の場合規格化した密度勾配スケール長は、#88343 の場合と比べて小さな値になる。 #88343と#109081の場合、ITG不安定性を特徴付けるパラメータの値は、それぞれ-12.0と1.37である。本研究では、電子運動に断熱近似を仮定している。特に#109081での断熱近似電子を用いたITG不安定性解析では、実験結果に近いイオン温度分布を予測するには不十分であることが示された。ITG不安定性解析において、電子運動についてのジャイロ運動論解析の重要性を指摘することができた。ジャイロ運動論解析に基づく簡約化モデルのさらなるモデル化により輸送シミュレーションの低コスト化を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度以降の研究計画は乱流レベルをジャイロ運動論シミュレーションにより概算し、輸送係数の値に反映させることであった。静電的なジャイロ運動論方程式を解くコードを用いたITGモードについての非線形解析を行っている。そして、線形成長率と帯状流レベルによる簡約化輸送モデルと比較されている。イオン温度勾配不安定性が駆動している場合において、電子運動に断熱近似をした時に、ジャイロ運動論方程式の線形解析を行った。その解析により、イオン温度勾配不安定性に重要な物理パラメータを設定し、イオン熱拡散係数のモデル化を行った。時間発展を解析する輸送コードにより、イオン温度分布の時間変化を調べ、大型ヘリカル装置での実験結果との比較を行うことができた。研究成果について学会発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでLHD高イオン温度モードである数ショットを対象にして、線形ジャイロ運動論シミュレーションを行い、イオン熱拡散係数のさらなるモデル化を行った。輸送コードでダイナミクスを追う際、時間発展のステップごとに線形解析を行うのはコストや時間がかかるからである。モデル化した熱拡散係数はダイナミクスを追う輸送コードに導入され、解析結果はLHD実験結果における密度、温度分布と比較される。しかしながら、電子について断熱近似を行ったモデリングでは、ITGモードが不安定化せず、実験結果を十分に説明することができなかった。断熱近似を行わずに、電子についてもジャイロ運動論解析を行い、電磁的な扱いをする必要がある。今後、電磁的ジャイロ運動論方程式解析による簡約化輸送モデルの導出を行う。
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Causes of Carryover |
乱流レベルをジャイロ運動論解析から求めた研究により、モデル化したイオン熱拡散係数を統合コードへ導入することができた。その成果を、国際会議2件、国内会議2件で報告することができた。会議における議論を通して、乱流輸送についての研究を加速することができている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究経費は主に研究成果を報告し、共同研究者と議論するための国内、海外旅費として使用される。 プラズマ不安定性モードにおいて、線形成長率のポロイダル波数依存性を調べることが、乱流輸送係数のモデル化の際に重要である。九大応力研では、乱流計測シミュレータにより乱流揺動振幅の波数依存性が研究されている。この依存性との相違点を調べることにより、乱流輸送の理解に大きく貢献することが期待出来る。その議論のための出張旅費として使われる。また、新規の研究成果を国際会議で報告するための旅費として使用される。
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