2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23561008
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
河村 繕範 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究主幹 (10354614)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 燃料・ブランケット / 同位体交換 / トリチウム回収 |
Research Abstract |
本研究は、核融合炉トリチウム増殖ブランケットからスイープガス気流中に放出されるトリチウムを回収するシステムのなかで、水蒸気成分を回収する水分吸着塔について、触媒機能を待たせることで水蒸気成分を回収しつつトリチウムの化学形態を水素ガスへ移行させることを目的とし、親水性交換触媒の検討を行うものである。これまでにもガス―水両成分の捕捉を目的とした親水性交換触媒の適用は検討されているが、本研究では従来のA型ゼオライトやアルミナではなく、比較的水分保持量の少ないNaモルデナイトを担体として選択した。研究初年度である平成23年度は、交換カチオンであるNaを1価の陽イオン(H, Li, K)で交換したモルデナイト及び、2価の陽イオン(Mg, Ca, Sr, Ba)で交換したモルデナイトを作成した。X線回折と表面組成分析の結果、モルデナイトの構造を維持した状態でカチオン交換されていることを確認した。細孔径は、K交換型のみ小さい方にシフトしている他は、明らかな変化が認められなかった。これらの試料からの水分の熱脱離挙動を調べたところ、吸着水分は物理吸着水が主体であり、水分保持量はMg交換型が最も大きく、K交換型は最も小さくなった。25℃における水蒸気吸着等温線の測定結果もこの関係を示唆するものであった。また、Li及びSr交換型は化学吸着水と思われる特徴的なピークが検出されたことから、触媒担体としたときにはアルミナと同じような性質を示すのではないかと推測される。以上の結果から、当面の触媒担体としては吸着量の大小の観点でMg, K交換型を、化学吸着水の有無の観点でLi交換型を候補として選定した。比較対象として原料のNaモルデナイトを加えた4種類について、次年度以降、まずは貴金属を担持させない状態での気相-吸着水間の交換反応を観察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は1)試料準備、2)試料分析、3)脱離挙動観察、4)考察の実施を予定していた。1)試料準備では、Naモルデナイトを出発物質とし、Naを1価の陽イオン(H, Li, K)で交換した試料及び、2価の陽イオン(Mg, Ca, Sr, Ba)で交換した試料を作成する計画で、これらは全て達成した。2)試料分析では、作成試料についてSEM及びXRDを用いた結晶構造観察、EDXによる組成分析、依頼分析による細孔径分布及び水蒸気吸着等温線測定を行う計画で、有償の依頼分析となる水蒸気吸着等温線測定に関しては、脱離挙動観察の結果を勘案することとしており、H、Sr及びBa交換型を除外したが、目標は達成した。3)脱離挙動観察では、熱重量測定装置等を用いて水分脱離挙動を観察し、水分の吸着形態とカチオン種との相関性を調べる計画であったが、余震の影響を避けるため、重量測定から水分濃度の直接測定に測定方法を変更して水分熱脱離挙動を観察した。赤外線分光分析は未実施であるため、吸着形態に関しては状況証拠しか得られていないが、概ね計画どおりに進められたと言える。以上の結果を受けての4)考察としては、モルデナイト型ゼオライトの吸着水分の大半が100-150℃付近で脱離することから物理吸着が主体と考えられる一方で、300-400℃付近での脱離が観察できる試料も存在し、交換カチオンによっては化学吸着の割合が比較的大きくなるものがあることがわかった。ただしなぜそうなるかは特定できていない。細孔径はK交換型のみ明らかに小さくなったが、比表面積と細孔径分布の相関性は見いだせていない。しかし、K交換型は水分吸着量だけでなく低温での水素吸着量も小さく、吸着量の減少は細孔の縮小に起因していると推定される。全体的には交換反応実験の試料選定し、当初の目標を達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と同様の手法で、遷移金属で交換した試料の作成と分析を進めつつ、候補に選定した試料についてはトリチウムを用いた交換反応実験を連携研究者の助言を得つつ実施する。平成23年度に作成した試料はアルカリ及びアルカリ土類金属で交換した試料であり、単独での触媒効果はあまり期待できないと予想している。性能評価を優先させるために、実験条件をある程度固定して試料を随時変更するかたちで進める。遷移金属交換型試料も水分脱離挙動で特徴的な性質を示したものを順次交換反応実験に使用する。交換反応の効果が大きくない場合は、貴金属担持や担体の変更等早めの方針転換を心がける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度繰越金はない。購入予定備品の一部について購入予定年度をH23年度とH24年度で入れ替えた他は、概ね当初の計画どおりに使用する予定である。国際学会及び国内学会への参加を各々1件予定しているが、消耗品を含め優先順位をつけて優先度の高いものから使用する。依頼分析は可能な限り無償のものを探して利用する。
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Research Products
(4 results)