2011 Fiscal Year Research-status Report
素子のナノ構造化・単結晶化による新型有機半導体放射線検出器の開発
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23561017
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
高田 英治 富山高等専門学校, 専攻科, 教授 (00270885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 義彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50285300)
浅井 圭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60231859)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機半導体 / ナノ構造 / 結晶化 / X線 / 測定 |
Research Abstract |
原子力プラントでの被曝線量管理や放射線利用医療における線量計測等に適用することを念頭に、有機半導体で構成され、十分な効率を持つ放射線検出器について研究を行った。ナノ構造を持つ有機半導体光検出器に関しては、PEDOT:PSS、P3HT、PCBMから構成され、サブマイクロメートルサイズのナノ構造を持つ素子を製作し、X線照射実験を行った。実験にはX線発生装置(160MF4)を用い、X線エネルギー:30keV~100keV、管電流:0.5mA~5mAの範囲で条件を変化させ実験した。その結果、ナノ構造を持たないヘテロ型素子よりも1.2倍程度、X線誘起電流が大きい結果が得られた。また、ナノ構造を持たない素子と異なり、X線照射中にX線誘起電流が減少しない傾向が見られた。これはナノ構造化することで励起子生成位置からPN界面までの距離が短くなり、X線照射中の電荷の蓄積(チャージアップ)が小さくなったためではないかと考えている。今後は素子製作におけるパラメータを最適化するとともに実験を繰り返し、ナノ構造化の効果の検証やよりX線誘起電流の大きい素子の開発を試みる。 シミュレーションによる素子構造の最適化に関しては、EGS5コードを用いて実施中である。現在までのところ、ナノ構造を持たない素子について計算結果と実験結果の比較を行っており、X線による有機半導体へのエネルギー付与の多くが、ITO電極における相互作用に起因するものである可能性を示した。生体等価な検出器開発のために有機電極の採用も検討する予定である。 シンチレータのナノ構造化については平成23年度に実施することが困難であった。平成24年度以降に検討を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナノ構造型素子の開発においては、素子の特性が予想以上に安定しなかったため、X線照射実験の結果を比較することが難しい状態であった。平成23年度末に素子性能の安定化が行えつつあり、今後、X線測定に適した素子の開発を行う予定である。 ナノ構造化した有機半導体PDの製作を優先して行ったため、ナノ構造シンチレータについては現状のところ検討が行えていない状況にある。PD製作が軌道に乗った時点でシンチレータへのナノ構造製作についても試作を開始したい。 また、有機半導体材料の結晶化については年間を通じて検討を行ったが、結晶化の条件出しが難しく現在までに結晶化までに至っていない。平成24年度以降も継続して結晶化方法を検討することが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ構造を有する有機半導体については、今後、製作数を増やすとともに、よりX線測定に適した素子形状について検討を行う。その際、EGS5、GEANT4といったシミュレーションを併用して素子へのエネルギー付与とX線誘起電流の関係を評価し、構造の最適化を並行して行う予定である。また、素子の動作特性の理解のため、従来から実施してきた高エネルギー加速器研究機構(KEK)における単色X線実験を継続して実施する予定である。 結晶化については平成24年度に時間をかけて検討を行い、平成24年度中にその可能性について判断する。結晶化が難しいとの判断に至った場合には、ナノ構造化に重点を置いた研究とする。シンチレータのナノ構造化については、平成24年度に試作を行い、その効果も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の試作においてはナノ構造化素子の安定度が十分ではなかったため、十分な評価が行えなかった。そのため平成24年度以降にも素子の試作を繰り返すため、平成23年度予算のうち50万円程度を平成24年度に繰り越した。この繰越額と当初からの配分予定額を用い、必要な試薬を購入した上で素子製作を繰り返し、安定した特性を持つ素子の製作パラメータを把握する。また、シンチレータへのナノ構造製作を行うため、プラスチックシンチレータなどの消耗品を購入予定である。素子の結晶化についても試作・検討を続けるため、試薬が必要である。以上の点を考え、平成24年度は経費の大部分を試薬や実験に用いる消耗品(電極材料など)に使用する予定である。 それ以外に高エネルギー加速器研究機構(KEK)での実験や、情報収集のための学会出張旅費などに支出予定である。平成24年度は当該研究に関連した国際学会としてIEEE Nuclear Science Symposiumへの参加、発表にも旅費を使用予定である。
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