2011 Fiscal Year Research-status Report
超高照射量領域での原子炉材料の力学挙動の実験/モデルによる推定
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23561022
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
實川 資朗 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主席 (80354835)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 弾き出し損傷 / 核変換生成ヘリウム原子 / 照射脆化 / ヘリウム脆性 / 加速器 / モデル化 / 構造・機能材料 / 原子力エネルギー |
Research Abstract |
核融合プラントの検討の中で、1000dpaを越える極めて高い照射損傷量での耐久性が必要になるとの見解が示された。また、福島での事故を受けて、軽水炉の使用期間が短くなる傾向は有るが、材料によっては、弾き出し損傷量が100dpa、核変換生成ヘリウム量が5000appmに達する可能性が有る。しかし、このような高損傷量領域での材料挙動の把握は進んでおらず、機器の安全性維持の視点からも評価の重要性が高まっている。本研究では、照射損傷速度が高い加速器によるイオン照射を用い、超高照射損傷領域での構造材料の挙動を、損傷機構モデル構築を行いつつ明らかにすることを目指す。なお、福島第一原発での照射損傷量は、炉型が沸騰水型であることもあり比較的低いが、高温での損傷が加わった結果、本研究での知見を残存強度の推定に活かせるところもある。H23年度には、イオン照射により高い損傷量を導入した試料の作製を開始した。また、微小な領域から強度特性を評価する試験装置の概念設計を開始し、加えて、微細組織と強度特性の関係についてモデル化を進めた。しかし、活動開始直前に起った東日本大震災により、照射装置、ナノインデンター、透過電子顕微鏡等に損傷が生じた。そこで、装置の損傷によってマシンタイムが減じられたが、高照射損傷量の試料の作製及びモデリングを集中して行うこととし、弾き出し損傷量については目標の半分程度の150dpaを達成し、He注入量については、最高値で目標値を越える10000appmを達成した。一方、モデリングについては検討を進め、成果の一部を国際会議で発表するとともに、作成中であった幾つかの論文の一部に知見を加えた。なお、国際会議の参加時に、カナダの重水炉で、高濃度の核変換生成ヘリウムによる脆化の発生について情報が得られた。本研究で想定の一つが現実にトラブルをもたらしたようである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で記したように、東日本大震災の影響で進捗に一部で遅れが出ている。但し、進めにくかった微細領域から強度特性を測定する機器の開発は24年度以降に回し、加速器によるイオン照射、モデル化等を集中して進めた。イオン照射のマシンタイムも減少したが、本研究を優先して進めることで、少なくともヘリウム原子の注入量については、当初の目標を超えるところを達成した。一方、弾き出し損傷量に関しては、対応が難しく、当初の目標を達成することは容易でない状況となった。しかし、弾き出し損傷の影響に比べて、ヘリウム原子の影響は明瞭に現れる知見が得られて来ており、このため全体的にヘリウム原子の濃度を増やす方向に変更する方が合理的である。このような点から考えると、遅れは主に強度特性の実験的な評価に関する機器及び手法の開発の部分となる。これについては、24年度以降にこれを強化する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
加速器によるイオン照射については、カナダの重水炉での知見から、弾き出し損傷に比べて、ヘリウム量に重点をおく方法を選択することにする。これに伴い、弾き出し損傷量の最高値を、これまでの1000dpaから、300-500dpaに減じる一方、ヘリウム量に関しては、10000appmを越える領域を対象とするよう変更を加える。また、東日本大震災の影響から遅れが生じた微小領域での強度測定については、これを加速する。モデリングについては、これまで通りの進捗を考えるが、一方、東日本大震災での福島第一原発への応用も検討の範囲とするよう工夫を行うものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に東日本大震災の影響で後回しにした、微小領域から強度特性を評価する手法の開発を加速する。併せて、福島第一原発での軽水炉の炉内機器材料の損傷状況の評価等に知見を活かす方向を加える。加速器を用いたイオン照射による、超高損傷量領域の試料の作製については、継続して実施し、累積損傷量を高めるが、軽水炉苛酷事故への応用、加えて、カナダの重水炉での材料損傷への応用を考慮して、弾き出し損傷量に比べ、ヘリウム原子の濃度を重視する方向とする。
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