2013 Fiscal Year Research-status Report
照射点欠陥の実効濃度に及ぼすマトリックス微細組織の影響に関する定量的評価と実験的
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23561024
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山下 真一郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 大洗研究開発センター 福島燃料材料試験部, 研究員 (10421786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 紀史 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344489)
関尾 佳弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 大洗研究開発センター 福島燃料材料試験部, 研究員 (70565689)
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Keywords | ボイド欠乏帯 / 中性子照射 / 電子線照射 / オーステナイト系鋼 |
Research Abstract |
原子力材料における実効点欠陥濃度の定量的評価とマトリックス微細組織の影響について、実験的な検証から新規材料開発に対する合理的な指針を導き出すことを最終の目的に、平成25年度は、Fe-15Cr-xNi系モデル合金(x=20, 25, 30, 35)、炭窒化物析出強化型(Fe-15Cr-40Ni)鋼、γ’/γ”析出強化型(Fe-15Cr-43Ni)鋼、及びNimonic PE16に対して中性子照射及び電子線照射下で形成したボイドの欠乏帯幅を電子顕微鏡を用いた組織観察により測定し、これまでに報告例のある理論式に当てはめて実効空格子濃度及び空格子フラックスを導出することで、ボイド欠乏帯幅及び実効空格子濃度等に及ぼすNi含有量や析出物等の影響の半定量的な評価を行った。本年度及び前年度までの結果の総合的な評価から、モデル合金ではNi含有量の増加に伴いボイド欠乏帯の幅が増加し、材料組成に応じた実効空格子濃度及び空格子フラックスの差異が示され、高Ni化に伴う耐スエリング特性向上の機構論解明に資する有用な評価手法であることが示された。一方、炭窒化物析出強化型(Fe-15Cr-40Ni)鋼、γ’/γ”析出強化型(Fe-15Cr-43Ni)鋼、及びNimonic PE16の実用鋼3鋼種については、ボイド欠乏帯の形成に及ぼす析出物の効果(換言すると、点欠陥に対する析出物界面のシンクとしての効果)に関する知見として、照射下組織安定性の高い析出物種を分散させたマトリックス組織ではボイド欠乏帯は形成しないが、照射により不安定化し再固溶するような析出物を含むマトリックス組織ではボイド欠乏帯が形成することを示した。 平成25年度までに得られた成果は、ボイド形成、及び照射誘起偏析抑制のための、マトリックス組織を的確に制御する新たな材料開発設計に資する有用な知見として重要かつ意義深いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子線照射試験について、照射試験を予定していた装置の不具合により当初予定していた試験数の実験ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度に未取得の実験データを取得することを目的として、研究期間を延長してFe-15Cr-xNi モデル合金(x=20, 25など)のボイド欠乏帯の幅を測定し、それぞれの実効空格子濃度や空格子フラックスを比較・評価することで、モデル合金におけるボイドスエリング抑制に及ぼすNi濃度の効果を調査する。また、ODSフェライト鋼やフェライト/マルテンサイト鋼についても可能な範囲でオーステナイト鋼と同様の電子線照射試験を行い、得られたデータをもとに、原子炉材料用の新規材料開発設計のための指針を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施を予定していた電子線照射試験が装置の不具合により実施できなかったため、平成25年度の試験経費(出張費、消耗品費等)の一部を使用しなかったため。 北海道大学に設置された超高圧電子顕微鏡を用いた電子線照射試験や本研究の解析評価および取り纏めに係る打合せのための出張費として使用する。そのほか、実験の消耗品費として、本研究の各種作業に必要となる物品を購入するために使用する。
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