2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23561025
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Research Institution | The Wakasa Wan Energy Research Center |
Principal Investigator |
笹瀬 雅人 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主任研究員 (60359239)
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Keywords | ナノ欠陥 / イオン照射 / 透過型電子顕微鏡 / ヘテロ界面 |
Research Abstract |
我々はイオンビームによる基板表面改質が拡散・反応を伴う成膜において高品質な薄膜作製に有効であると考えた。そこで、環境半導体鉄シリサイド薄膜(β-FeSi2/Si)の成長を通して、成膜におけるイオンビーム技術とその照射効果について、透過型電子顕微鏡による微細構造観察を中心に検討を行った。さらに、イオンビームが作り出す「柔らかい層」が、より一般的にヘテロ界面創製に有効であることを示すことを目的とした。 平成23年度には、イオンビームを用いた表面処理条件(柔らかい層作製)の最適化を図った。その結果、1keV, 1013 ions/cm2の前処理条件にて急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜が得られた。しかしながら、これまで良質だと思われていた薄膜内において界面に平行にならんだ規則性のある欠陥が観察された。この欠陥は、本手法による薄膜成長において重要な役割を担っていると考えられる。 平成24年度では、膜内に生成した規則性を持つ欠陥について、高分解能透過型電子顕微鏡による微細構造観察を通して欠陥種の同定や、欠陥がもたらす急峻なヘテロ界面成長メカニズムについて検討した。その結果、最適条件により得られた膜内において、界面に平行に存在する欠陥の観察から、この規則的なパターンは点欠陥の凝集したカスケード欠陥と考えられ、その距離・大きさは、前処理の照射エネルギー依存性を示した。この結果から定性的ではあるが、前処理でできた欠陥が膜内に拡散し、成膜中に移動することを示唆している。さらに、基板の表面処理でできた点欠陥がこのスパッタ成膜のプロセスにおいては相互拡散を促し、反応を促進する役目を果たしていた。 平成25年度において、ヘテロ界面成長メカニズムの最適化から、ナノ欠陥を効果的に用いることで、再現性良く、原子オーダーで急峻な界面を持つ高品質なシリサイド薄膜の成長に成功した。
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