2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波加熱による金属酸化物からのプラズマ生成メカニズム
Project/Area Number |
23561030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蜂谷 寛 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90314252)
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Keywords | エネルギー効率化 / 材料加工・処理 |
Research Abstract |
マイクロ波の金属酸化物 (酸化亜鉛、酸化鉄、二酸化チタン、酸化銅、等) への照射によって、金属元素、酸素のいずれか、あるい は両方のプラズマが放出される。この、プラズマの種類による放出速度の差、および反応管内での輸送速度の差を利用すれば、従来の 電気炉を用いたプロセスよりも低エネルギー消費・低炭素使用量での、酸化物からの金属回収、不純物を除去し組成を制御した新たな 酸化物の生成が可能となると考えられる。しかしながら、マイクロ波照射によるプラズマ生成のメカニズムは未だ明らかになっていな い。 本研究では、生成するプラズマを中心とする気相と酸化物試料に対する分光学的手法・材料科学的手法による分析を通じて、上記の メカニズムを明らかにすることを目的とする。 本年度は、引き続き、マイクロ波照射装置に付属の小型分光光度計より、発光の時間変化の実時間モニタによる時間分解測定を行った。あわせて、自由電子レーザー設備(京都大学エネルギー理工学研究所)、および、UVSOR実験施設での、マイクロ波照射金属酸化物のフォトルミネッセンス(PL)、フォトルミネッセンス励起(PLE)スペクトルの測定によって、照射によって生じる欠陥からの発光バンドの特定を行い、プラズマ生成に伴う基板の変化のメカニズムの研究を行った。 酸化亜鉛を用いたPLEによれば、マイクロ波照射によって生ずる欠陥は、PLにおいて観測されるバンドギャップ中間と伝導帯近傍の電子準位への励起によって発光するバンドのうち、後者の伝導帯近傍の準位であり、照射時のプラズマ生成に伴ってこの欠陥が増加することが判明した。 あわせて、照射時間中のプラズマ生成と発光との相関を定める現象論的なモデルの構築を行い、論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由電子レーザー実験設備(京都大学エネルギー理工学研究所)にくわえて、UVSOR実験施設におけるフォトルミネッセンス励起スペクトルを行うことができたことにより、発光バンドの特定が可能となり、マイクロ波照射の結果、プラズマ生成によって生ずるバンドギャップ内欠陥準位の特定を行うことができた。 また、本研究の主目的であるプラズマ生成メカニズムについて、生成のダイナミクスと強く相関する試料からの発光とプラズマからの発光の時間変化を記述する現象論的なモデルを構築できたことにより、上記のプラズマ生成に伴う電子論レベルでの知見と併せて、全メカニズムの解明に向けて大きく進むことができた。 マイクロ波加熱装置(2.45 GHz)に関しては、あらたに、レーザー装置及び自由電子レーザー実験装置での測定系に接続する形での設置を行うことができた。 これらすべての研究について、エネルギー理工学研究所の自由電子レーザー実験グループを中心とする当該実験施設と、密に協力して研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における主装置におけるフーリエ変換赤外分光光度計に対して、赤外顕微ユニットの導入を行うことができたため、同様のラマン測定と加えて、照射前後での試料表面の顕微画像における特定部分でのスペクトルを高感度に取得することによって、上記の現象論的モデルと電子論的な知見をつなぐ、照射によって生じる欠陥近傍の振動状態の変化を通じたダイナミクスの探究を行う。 また、より幅広い金属酸化物へのマイクロ波の照射や、酸素と同じ第16族元素でありながら金属元素との結合の様態の異なるカルコゲン化物の電磁波との相互作用ダイナミクスへの展開も図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おもに付加的な光学部品の購入を中心に使用する予定である。 また、現在投稿中の学術論文の投稿費用及び、研究成果の国内・海外での発表のための費用に使用する。
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