2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23561031
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
原 豊 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60242822)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 低重心風車 / 小型風車 / 風力発電 / 再生可能エネルギー / 空力データ |
Research Abstract |
本研究では、(1)計算による最適な低重心風車形状の探索と(2)模型実験による性能の検証を2つの研究目的としている。 平成23年度は、(1)については数値流体計算(CFD)による翼型特性計算の準備として、文献値が存在する対称翼型のNACA 0018を計算対象とし、レイノルズ数条件:Re=1e4 ~1e7、および迎角範囲:0°から180°で空力データの計算を実施した。計算は汎用CFDソフトウェアSTAR-CCM+を使用し、RANSを用いて2次元定常計算を行った。結果として、2次元定常計算のような比較的低コストの計算でも、Re = 1.6e5以下の低レイノルズ数領域において、ある程度の精度で翼型空力データの計算が可能であることが分かった。また、風車性能予測を行う翼素運動量理論プログラムの入力データとして本研究で得られた空力データを使用した場合、文献値を使用した場合に比べ、小型風車の実験データにより近い結果を与え改善が見られた。 (2)についてはアルミハニカム1枚と金網3枚を使用した小型風洞を製作した。また、光造形法により直径0.6m、高さ0.39mの低重心風車模型2種類(翼取付角が0度と4度)と直線翼垂直軸風車模型を製作し性能実験を行った(翼型はすべてNACA 0018)。直線翼風車では、取付位置や取付角を変化させ、各条件でトルク特性を計測した。小型風洞の最大風速が小さいため(4.5m/s)、低重心風車模型ではプラスのトルク特性は得られなかったが、取付位置が50 %の直線翼風車のトルク特性と比較した結果、取付角度依存性に関して定性的に同じ傾向が得られた。整流部なしの状態(風速8.2 m/s)で低重心風車のトルク計測を行い、既存の直線翼風車データとの比較により、低重心風車のトルク特性が直線翼風車の特性に比較して、変化が急峻ではないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的(1)において、2次元定常計算という低コスト計算でありながら、広いレイノルズ数範囲と広い迎角範囲におよぶ空力データの計算を行い、どのような条件で文献値と合うか合わないかという見通しを得ることができたことは、1つの成果と考えている。また、本計算で得られた空力データを用いた小型風車の性能予測において、従来の計算に比べて改善が得られたことも重要な結果である。ただし、自動的に条件を変えた計算を行うプログラムの自動化は実施できていない。しかし、この自動化の実現に時間を割くよりも、計算の信頼性を優先させることの方が重要と考えており、自動化をしなくても、現状のやり方で計算は行えているため、今後も余力があった場合にかぎり自動化を試みることにしたい。 目的(2)においては、予定通りに小型風洞を製作し流れ場の均一性を改善できた。また、計測データ(風速,トルク,回転数)のパソコンへの取り込みの自動化を行なう計測システムの構築も行った。光造形による低重心風車および直線翼垂直軸風車の製作を行い、取付位置や取付角などの条件を変えた計測を実施したので、当初の計画はほぼ実行できていると考えている。ただ、小型風洞の最大風速では設計した模型風車はプラスのトルクを発生しないため、今後はソリディティを高め低速型とすべきことと、小型風洞の最大風速を高める必要性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた2次元定常計算では、失速領域(迎角:約15°~30°)や90°前後の高迎角範囲、そしてRe=3.6e5以上の高レイノルズ数領域では明らかに大きな誤差が発生していたため、今後は失速領域や高迎角領域では非定常計算を行うことにする。また、遷移を考慮した乱流モデル(transition-SSTなど)を使用する方向で検討を行い、NACA 0018を計算対象として、精度改善のチェックを行う。その後に、キャンバーのついた翼として、NACA 2518, NACA 4518, NACA 6518などの翼型3種類ほどに絞って、空力データの計算を行う。なお、非定常計算では計算時間がかかることが予想されること、および、高レイノルズ数ではメッシュ解像度の制約から十分な精度が得られないため、計算するレイノルズ数を各翼型について、1e4, 2e4, 4e4, 8e4, 1.6e5, 3.6e5, 7e5, 1e6の8つに減らした上で、小型風車用の空力データの精度改善を目標とする。 実験においては、まず小型風洞に収縮ノズルを取り付けて風速を増加させる対策を検討する。模型風車に関しては、低風速で高い性能が期待できるように翼弦長を増加したソリディティの大きな低重心風車模型を設計製作する。この際に、ロータの各部の回転半径に依存して、翼の中心線(ミーンライン)の曲率を変化させたキャンバー付きロータを設計し、キャンバーのないロータとの比較実験を行う計画とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において2,416円の経費が残額として残ったが、これは金額が小額であり必要な物品等が購入できないため、次年度に繰越すことにした。 平成24年度においては、上記の繰越し分と合わせた研究費の約半分(479千円)は、空力データベースの構築を継続して行うために、CFDソフトウェア(STAR-CCM+)のレンタル費に使用する。残りの研究費の大半は光造形による模型風車の製作費として使用する計画であり、一部は小型風洞のノズルの製作費とする予定である。また、研究費の10%程度は研究成果発表のための旅費と英文校正などに使用することを予定している。
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