2011 Fiscal Year Research-status Report
可処分時間を考慮した産業の生産性および環境効率の評価
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23561032
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
八木田 浩史 日本工業大学, 工学部, 教授 (60222353)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 可処分時間 / 産業 / 生産性 / 環境効率 |
Research Abstract |
日本の製造業に注目して「産業の生産性向上の検討とICT機器の導入による効率改善、時間を考慮した環境効率の概念の拡張、現代における時間の価値の定量的な考察」の3点について、既存の文献・資料を収集して、整理した。産業の生産性向上の検討に関しては代表性がある統計資料が存在するため、統計資料及び関連情報を収集・整理した。ICT機器の導入による効率改善に関しては、時間を考慮した環境効率の概念の拡張、現代における時間の価値の定量的な考察に関する文献等の収集・整理の結果によって検索する情報が変わる可能性があるため、本年度はICT機器の定義について調べた。時間を考慮した環境効率の概念の拡張、現代における時間の価値の定量的な考察における時間を考慮した内容の検討事例に関しては、これまでに体系的にまとめられた資料が少ない上、関連する文献・資料の状況が整理されていないことから、文献・資料の収集・整理を行った。具体的にはインターネット、国会図書館及びNACSIS-webchatなどで本研究に即した内容の文献、資料、書籍を検索し、検索結果をもとに有用と考えられる資料の内容を吟味して文献リストを作成して、記載内容を整理した。このほか、省庁や研究機関、企業などが調査を実施している統計があり、これらについて把握できる範囲で調査結果の概要を整理し、経年変化が見て取れるように表形式に取りまとめた。またドキュメントスキャナー、ネットスーパーによる可処分時間の拡大に関して、予備的な検討を行った。本年度の研究を通じて、時間の価値を判断する際の背景には、幸福(ハピネス)という概念の存在が関わってくることが見えてきた。幸福というものは、見方によって、その度合いや感じ方が異なるものであり、国としてみた場合、産業としてみた場合、個人としてみた場合、動物としてみた場合など、何を持って幸福とするのか一様でないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は「先行研究の調査、製造業の統計データの収集、ICT技術による効率改善の予備検討」を行う計画であった。先行研究の調査に関しては、現代における時間の利用の定量的かつ大規模な調査事例として省庁で実施されている国民生活調査、社会生活基本調査などの国民の生活時間についての調査を対象として、長期的な時間の利用法の変化を整理した。また文献・資料の検索を実施した結果、時間をテーマとして取り扱っている書籍は多いものの、時間をテーマとした学術論文は多いとはいえないことを確認している。製造業の統計データの収集に関しては、目安となる産業分野のエネルギー消費動向と経済指標について、経済産業省が実施している総合エネルギー統計および燃料消費動向統計に基づいて過去から現在までのエネルギー消費動向を把握すると共に、内閣府が実施している経済指標調査に基づいて産業全体としての経済的な指標の長期的な変化を整理している。ICT技術による効率改善の予備検討に関しては、モバイル型のドキュメントスキャナー導入に伴う日帰り出張時の移動時間の削減による可処分時間の拡大可能性について検討を行うと共に、ネットスーパーによる商品選択および移動といった買い物時間の削減および買い物時間のシフト可能性について予備的な検討を行った。ネットスーパーは商品受け取りの時間指定など制約要件があると共に、単純な費用側面からみると必ずしも得にはならない場合がある。その一方、特に家庭での時間を重視する利用者、また近所に店舗が少ないなど買い物の自由度がない場合などには、従来のスーパーにはない利便性が存在すると考えられる。また日本LCA学会において本年度の研究成果の一端について口頭発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた、産業の生産性向上の検討、ICT 機器の導入による効率改善などについての有識者へのヒアリングが行うことが出来なかったために、次年度に使用する予定の助成金が生じた。これは研究の提案段階から想定されていたことである。今後の研究の推進の方向性としては、次のようなことを考えている。自身が開発したエネルギー評価ツールであるNICE(National Integration of CO2 Emission)モデルへ労働時間あるいは可処分時間を取り込んで長期的な産業構造変化を検討する。また時間を含む持続可能性に対する価値観に関する調査などを行う。特に持続可能性に関しては、経済的な発展に伴って必ずしも幸福度が増加しないという指摘もあることから、時間、特に可処分時間の観点から幸福に関して検討するといった研究展開の可能性もあり得ると考えられる。また生産効率の改善および可処分時間の長さに着目して研究に着手したが、時間の長さ以外の可処分時間の質に関する検討の可能性もあり得ると考えている。このように有識者ヒアリングに変わる複数の研究方策を検討すると共に、研究の方向性の変更・展開についても検討することにより、今後の研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、「産業の生産性向上の基礎的な分析、ICT技術による効率改善の基礎的な分析」について研究を実施する。産業の生産性向上の基礎的な分析に関しては、日本の製造業に着目して、1970年~2010年までの長期的な生産性の向上について、エネルギー消費と労働時間の観点から定量的に論じる。また可能であれば、サービス業におけるエネルギー消費と労働時間の関係についても検討することを試みる。ICT技術による効率改善の基礎的な分析に関しては、ICT技術の導入に伴う時間および空間の利用効率の改善を検討する。またエヴァーノートに代表されるネットワークストレージ、G-mailに代表されるWebメールといった「クラウドコンピューティング」を対象として取り上げ、クラウドコンピューティングによる時間の利用効率の拡大について、環境側面と合わせて基礎的な検討に着手する。なお本年度の研究において、時間の価値判断の背景にある幸福(ハピネス)が一様でないことが明らかになったことから、時間を含む持続可能性に対する価値観に関しても情報を収集・整理する。またネットスーパーに関する予備検討において、時間の評価では単純な効率改善および可処分時間の長さ以外の側面を考慮する評価の必要性が示唆されたことから、可処分時間の長さ以外の質に着目した研究展開の可能性についても検討を行う。また本年度の研究成果を、日本エネルギー学会、日本LCA学会などの学会において、口頭発表、誌上発表を行う。
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Research Products
(1 results)