2012 Fiscal Year Research-status Report
可処分時間を考慮した産業の生産性および環境効率の評価
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23561032
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
八木田 浩史 日本工業大学, 工学部, 教授 (60222353)
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Keywords | 可処分時間 / 生産性 / 環境効率 |
Research Abstract |
日本の製造業に注目して「産業の生産性向上の検討とICT 機器の導入による効率改善、時間を考慮した環境効率の概念の拡張、現代における時間の価値の定量的な考察」の3点について、既存の文献・資料を収集して、整理した。特に今年度は、1.エネルギー供給実態、2.エネルギー供給に影響を及ぼす事象、3.電気電子製品の価格変動、4.時間経過と世論の関心といった事項に着目して資料収集を行った。 1.エネルギー供給実態については、国内におけるエネルギー供給に関するデータ資料を収集・整理した。2.エネルギー供給に影響を及ぼす事象については、インターネット情報と新聞記事等を参考にエネルギーの供給状況に影響を及ぼしそうな事象、事故等について整理した。3.電気、電子製品の価格変動については、液晶テレビとLED電球を対象として、価格変化の推移を記した文献とデータの収集を行った。4.時間経過と世論の関心については、書籍から抽出したブログの炎上事例を整理し、内容と発生時期、その経過を整理した。エネルギー供給に影響を及ぼした事象としては、(1)第1次・第2次・第3次オイルショック、東海村JCO臨界事故、東京電力原子力全停止といったエネルギー価格・技術などに関する事象、(2)バブル景気および引き続いてのバブル崩壊、サブプライム住宅ローン危機、リーマンショックなどの純粋に経済的な事象、(3)東日本大震災のような自然災害に起因する事象に三分され、特に(1)と(3)の事象は、エネルギー技術開発・導入に対して影響していることを再確認した。 また液晶テレビとLED電球の普及を比較することにより、産業技術の開発・普及の速度が加速していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は「先行研究の調査、製造業の統計データの収集、ICT技術による効率改善の予備検討」を行った。先行研究の調査に関しては、現代における時間の利用の定量的かつ大規模な調査事例として省庁で実施されている国民生活調査、社会生活基本調査などの国民の生活時間についての調査を対象として、長期的な時間の利用法の変化を整理した。 平成24年度は「産業の生産性向上の基礎的な分析、ICT技術による効率改善の基礎的な分析」を行う計画であった。産業の生産性向上の基礎分析に関しては、その基礎となっているエネルギー供給に影響する事象を長期的に分析を行った。エネルギー需要量に影響する景気の浮揚と、エネルギー価格変動や自然災害のようなエネルギー技術開発の方向性に影響する事象に大きく二分されることを確認した。 ICT技術による効率改善に関しては、タブレットPCの導入による通勤時・出張時の隙間時間の活用による産業の効率改善に着目して、メール処理および出張報告書の作成などの具体的な作業をシナリオ分析した結果、タブレットPCの導入による生産性の向上が大きいこ とを確認した。 加えて産業構造の変化について、労働時間・労働者数に着目して、第1次・第2次・第3次産業を対比分析すると共に、各種製造業について生産性を対比して整理した。製造業に関しては、一人当たりの生産性が高い技術集約型の産業と一人当たりの生産性は必ずしも高くないが産業規模が拡大している労働集約型の産業に分けられることを確認した。技術集約型・労働集約型の分類に関しては、パートタイマー労働者、技術開発者の比率に着目した整理することが可能であることを確認した。 これら23年度および24年度の研究成果の一端は、日本エネルギー学会、日本LCA学会において口頭発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度使用額(繰越金)は、平成25年度において予定していた有識者へのヒアリングを行うことが出来なかったことに起因している。NICE(National Integration of CO2 Emission)モデルへ労働時間を取り込み長期的な産業構造変化を検討するなど研究の方向性を修正してきている。今後は、以下のような推進方策を行う予定である。 液晶テレビとLED電球について対比して分析した結果から、産業構造の変化もスピードアップしている可能性があると考えられるため、技術開発・普及の速度についても研究の中で考慮することを検討する。またインターネットの利用における利便性の観点と、可処分時間のネット利用による浸食といった観点を考慮した展開の可能性についても検討を行う。 産業技術の発展および発展速度と、生活の利便性の向上といったポジティブな側面と、可処分時間の浸食、浪費といったネガティブな側面について、産業の生産性および可処分時間の関係について検討を深度化する。すなわち産業の生産性および可処分時間に関する量的な部分に加えて、産業技術の開発および可処分時間に関する質的な側面に関して研究を展開する必要があると考えている。 また時間の価値判断の背景にある幸福(ハピネス)について引き続き検討を継続していくと共に、技術開発と普及の速度、人間の生活の変化、生活のリズムなどの観点も検討していく可能性もある。 このように本研究においては、可処分時間を扱うに際して単純に量的な評価では不十分である可能性が想定される。今後の研究に関しては、引き続き幸福(ハピネス)などの質的な関連研究事例について知見の収集・整理を進めると共に、その中で可能な部分について 可処分時間の評価に「量的」な要素として取り込むことを検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、「産業の生産性向上の総合評価、ICT技術による効率改善の総合評価」について研究を実施する。 物品費に関しては、文献複写の取り寄せ、統計資料類を含む書籍の購入などを行う予定である。旅費に関しては、日本エネルギー学会第22回大会(8月6日(火)~8月7日(水)、工学院大学(東京))、日本LCA学会第9回研究発表会(2014年3月4日(火)~3月6日(木)、芝浦工業大学(東京))において学会発表を行う予定である。Fourth International Symposium on Fiber Recycling(6月10日(月)~6月11日(火)、関東学院大学(横浜))、Asia Pacific Conference of Sustainable Energy and Environmental Technology(7月5日(金)~7月8日(月)、東横イン成田空港(成田))に参加して情報収集を行うことを予定している。また以下の研究項目の実施に際して、文献調査を含む基礎資料の収集および整理を委託調査することも考えている。 産業の生産性向上の総合評価に関しては、日本の製造業の長期的な生産性の向上について、エネルギー消費と労働時間の観点に基づいて総合的に評価する。また経済発展とエネルギー消費の関係におけるデカップリングの進展について、産業における時間とエネルギーの観点から定量的に検討する。ICT技術による効率改善の総合評価に関しては、特にタブレットPC、スマートフォンに関して、産業での活用による可処分時間の拡大に加えて、拡大した可処分時間すなわち日常生活における可処分時間の質的・量的な変化についても検討を展開する。
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Research Products
(7 results)