2013 Fiscal Year Annual Research Report
生殖腺によって制御される嗅覚行動の分子基盤と神経回路における情報処理機構の解析
Project/Area Number |
23570007
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 学 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70359933)
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Keywords | 行動 / 線虫 / 生殖腺 / 摂食 |
Research Abstract |
<2013年度の成果> 線虫C. elegansの成虫は生殖細胞を欠損すると、匂いの好みに変化が生じる。これまでに生殖細胞を失っても匂いの好みが変化しない変異体(D’4-13-7株)を得ていた。2013年度は染色体マッピングおよび全ゲノムシークエンス解析を行い、この変異体の原因遺伝子が咽頭筋で働くミオシンをコードしている事を明らかにした。咽頭筋を詳しく観察したところ、この変異体では咽頭筋の摂食運動が低下していることも分かった。咽頭筋の摂食運動が低下していることが知られている別の変異体において生殖細胞を欠損させたところ、D’4-13-7株と同様に匂いの好みに変化が見られないことが分かった。これらの結果から、生殖細胞欠損によって匂いの好みに変化が起こるには、十分な餌の摂食が必要であることが示唆された。 <研究期間を通じた成果> 本研究課題において、生殖細胞の増殖がどのようにして個体の行動パターンの変化を引き起こすのか、そのメカニズムについて解析を行った。その結果、全く予想していなかった個体のエネルギー状態との関連が明らかになった。本研究期間中の成果として、順遺伝学的及び逆遺伝学的解析から、生殖細胞欠損時の匂いの好み変化には、ミトコンドリアでの正常なATP合成と正常な餌の摂食が必要であることを示すことができた。このことから、生殖細胞の増殖をともなう個体の性的成熟により、体内ではエネルギー状態の低下が起こり、それにより神経回路の改変が起きて匂いの好みが変化しているのではないかと考えられた。今後、体内の栄養状態の変化がどのように神経回路とその機能に作用するのか、その分子機構を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(1 results)