2013 Fiscal Year Annual Research Report
大規模ゲノムの可逆的な逆位による表現型スイッチングについて
Project/Area Number |
23570009
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
崔 龍洙 北里大学, 付置研究所, 部長補佐 (50306932)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / ゲノム逆位 / 表現型スイッチング / ヘテロ性質 / 持続感染 / Small colony variant |
Research Abstract |
本研究では、黄色ブドウ球菌において、宿主免疫の回避能力を持つが抗菌薬感性のsmall colony variant(SCV)型と抗菌薬耐性能力を持つ正常型(large colony variant,LCV)の性質の異なる菌が、お互いに頻繁に遷移しながら共存してヘテロ細胞集団を形成することを発見し、この状態が患者に持続感染を引き起こす原因であることを明らかにした。また、そのヘテロ性質の形成と維持は、細菌が過酷な環境に生き残るための生存戦略であることも明らかにした。更に、その表現型スイッチング(SCVとLCV間のお互いの遷移)とヘテロ性質の形成・維持の遺伝学的メカニズムは、細菌の自己染色体の巨大ゲノムが頻繁に可逆的に逆位することで生じている現象(Flip-Flop inversion)を発見し、この研究成果を2012年のPNASに発表した。 細菌の進化過程において、生き残りをかけたbet-hedging戦略としてのヘテロ性質は、迅速に環境に順応する手段として極めて有益である。上記のSCVは感染初期から持続感染において免疫系を逃れる形態として、抗菌薬に暴露されればLCVとして生き残る形態に変化して、生き残りをかけた戦術を展開している。この様な現象は他菌種を含めて表現系としては捉えられていたが、遺伝学メカニズムは謎のままであった。本研究を通じて、ヘテロ性質として、β-ラクタム薬耐性と感性、溶血毒素の産生と非産生が同一菌で生じる事を詳細に検討し、そこにSCVとLCVが深く関与している現象を発見した。さらに、このSCVとLCVの遺伝学メカニズムがFlip-Flop inversionである事を突き止め、世界的で初めてSCVとLCVの遺伝学的メカニズムを解明した。 細菌が環境変化に応じて、自己染色体の巨大ゲノムのスイッチングを介し、生き残りに適した表現型を生じることで、再燃や難治性の原因に寄与していると考えられる。
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Research Products
(3 results)