2011 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム安定性維持機構に関連する遺伝子の分離と機能解析
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23570012
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
菅谷 公彦 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (80280741)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / ゲノム安定性維持機構 / 温度感受性変異株 |
Research Abstract |
本研究課題は、哺乳類培養細胞の温度感受性変異株を用いて、染色体安定性維持機構に関連する遺伝子を分離し、その機能を明らかにすることを目的とする。研究対象である温度感受性変異株は、制限温度(39℃)において染色体不安定性やDNA合成活性の低下などの表現型を示す。本研究では、解析が進んでいない変異株に関して原因遺伝子の分離と機能の解明を行う。また、対象とする温度感受性変異株には、DNA合成活性の低下やS期での細胞周期の異常などの表現型を示すものも少なくない。そこで、変異株中の複製反応を評価できる実験系を確立し、複製反応と染色体不安定性との関連を明らかにする。平成23年度は、以下の項目に関して研究を行った。1.ヒトDNAによる温度感受性の相補と形質変換株の分離 ハムスターCHO-K1細胞由来の温度感受性変異株に断片化したヒトDNAを導入し、遺伝学的相補により制限温度で生育可能となった形質変換株の分離を行った。10株の候補変異株中8株に関して相補実験が終了し、3株の変異株から形質変換株が得られた。分離した形質変換細胞よりゲノムDNAを調製し、ヒト特異的なAlu配列を利用したPCRにより相補に関連したヒトDNA断片の特定を行っている。なおtsTM3株に関しては、野生型遺伝子の導入による相補実験と塩基配列の解析による変異の同定により、その原因遺伝子がユビキチン活性化酵素E1であることを確認し、学会にて発表した。2.DNA複製反応の解析系の確立 DNA合成活性の低下などの表現型を示す温度感受性変異株に関して、EdUにより新生DNA鎖を標識する実験系を構築した。また、制限温度下でDNA合成に異常を示すtsTM18株において、スプライシングに異常を生ずる遺伝子座を新たに2ヶ所同定し、DNA複製を解析する遺伝子座の候補とした。本成果をこれまでの成果と合わせて学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は基金助成金の初年度であったが、東日本大震災の影響により開始が例年より1か月遅れの5月となった。また、福島第一原発の事故に起因する放射線に関する一般からの電話対応や依頼講演などの新たな業務が加わった上に計画停電や節電の影響もあった。これらの理由により、ヒトDNAによる温度感受性の相補と形質変換株の分離そしてDNA複製反応の解析系の確立に関しては、少なからず研究計画が遅れている。一方、tsTM3株に関しては温度感受性変異を同定するなど、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
染色体安定性維持機構に関連する遺伝子を分離するために、ヒトDNAによる温度感受性の相補と形質変換株の分離を行い、ヒト特異的なAlu配列を利用したPCRにより、相補に関連したヒトDNA断片を特定する。変異株の原因遺伝子の分離に関しては、科研費の新学術領域「ゲノム支援」への応募など、より効率的な方法を模索し随時計画を見直しながら進めたい。また温度感受性変異株中の複製反応の解析に関しては、予想以上の成果が得られているtsTM3株を研究対象の最優先候補として位置づけ、染色体安定性維持機構と複製反応そしてユビキチン活性化酵素E1の連関について研究をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
染色体安定性維持機構に関連する遺伝子の分離に関しては、未解析である温度感受性変異株2株に対してヒトDNAによる温度感受性の相補と形質変換株の分離を行う。さらに分離した形質変換株よりゲノムDNAを調製し、ヒト特異的なAlu配列を利用したPCRにより相補に関連したヒトDNA断片を特定する。これらのDNA断片の塩基配列を決定し、相同性検索によりヒトゲノム上の位置を同定する。変異株中のDNA複製反応の解析に関しては、非許容温度下で複製反応に異常を示すtsTM3株などの変異株を対象に、EdUやビオチン-dUTPなどの核酸前駆体アナログを細胞内に導入し、DNAファイバーを作製するなどして複製フォークの伸長を解析する。これらの計画を進めるに当たり、消耗品費として相補実験と分子生物学的な解析に用いる試薬とキット類、そして新生DNA鎖の検出のための試薬の購入費を計上した。また、相補実験と分子生物学的な解析のための実験補助者に対する謝金と、研究成果発表のための学会参加費と旅費を計上した。
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