2013 Fiscal Year Annual Research Report
更新世以降の棲息ニッチ分割における生態化学量論の相対的重要性
Project/Area Number |
23570015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 渡 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90372309)
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Keywords | 生態化学量論 / ヒゲナガケンミジンコ / ニッチ分割 / 種間競争 |
Research Abstract |
本研究では、現世のタイムスケールでの生態学的事象を解析する際に有効であるとされている「生態化学量論Ecological Stoichiometry」を、これまでにほとんど扱われたことがない「大過去から継続する現象」に対して応用を試みた。すなわち、我が国の淡水ヒゲナガケンミジンコ類を材料とし、更新世以来継続されていると考えられる種間の棲息ニッチ分割(高緯度あるいは高標高地域分布種と、低緯度あるいは低標高地域分布種に大別される)において、生態化学量論の相対的重要性を検討することを試みた。具体的には、本研究により開発した連続飼育培養系により、異なる炭素:リン比(すなわち、質的に異なる)の植物プランクトンを作成してヒゲナガケンミジンコ類にあたえ、個体群成長速度と「ダメージ係数(質の悪い餌を与えた時の成長速度が、質の良い餌での値の何%に減少するか)」を見積ることに成功した。そして高緯度/高標高地域分布種と低緯度/低標高地域分布種との間で「ダメージ係数」を比較することを試みたが、現時点までに明瞭な差は得られていない。これとは別に、質の良い餌で飼育した場合でも、低緯度あるいは低標高地域分布種では、低温域における死亡率が著しく高いことも判明した。現時点までに得られた結果を総合すると、高緯度/高標高地域分布種と低緯度/低標高地域分布種との間にみられるニッチ分割は、餌の質を考慮する生態化学量論から論議せずとも、至適水温の違いにより説明できると考えられた。
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