2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物間の間接相互作用網を創出する「捕食-被食関係」に関する行動生態学的研究
Project/Area Number |
23570018
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
長 泰行 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (90595571)
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Keywords | 捕食ー被食関係 / 捕食回避行動 / 誘導反応 / 雑食性 / ギルド内捕食 / 揮発性物質 / 国際情報交流 / オランダ |
Research Abstract |
本研究の目的は、自然界に共存する生物種間の直接的・間接的な相互作用が、捕食ー被食関係の維持に及ぼす影響を明らかにすることである。本年は、(1)ナミハダニ(以下ハダニ)が捕食回避のために生産する網が、他種の被食者ミカンキイロアザミウマ(以下アザミウマ)と捕食者キイカブリダニ(以下カブリダニ)に及ぼす影響、と(2)カブリダニの産卵場所選択に共食いとアザミウマによる卵捕食が及ぼす影響について実験を行った。 (1)カブリダニはアザミウマを捕食する一方、卵がアザミウマに捕食されることもある。カブリダニはハダニの網がある葉でアザミウマを捕食し、産卵することを好むことを明らかにした。しかし、ハダニが多い(網が多い)葉は逆に避けた。一方、網があることで卵の捕食が減少した。 (2)カブリダニのメス成虫は自分と他個体の卵がある場所を区別すること、それにより子供間の共食いが減少することを明らかにした。その認識には卵に由来する物質の関与が強く示唆された。また、餌としてアザミウマ(卵捕食の危険がある)ではなく、人工餌を与えた場合には産卵選好性が変化し、卵捕食のリスクが影響することが示された。 本研究結果から、捕食ー被食関係は単に前者が後者を食い尽くすというだけではなく、他の捕食者、被食者(植食性、雑食性)の存在によって、その捕食の強度が直接的・間接的に変化することで、自然界における両者の共存を促進する可能性が示された。このようなメカニズムは、単に生物間の関係を理解するだけでなく、生物多様性の保全を進める上でも重要であると考えられる。
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