2011 Fiscal Year Research-status Report
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23570021
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
三宅 崇 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00380569)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物間相互作用 / サビキン / 精子器 / 昆虫誘引 |
Research Abstract |
サビキンの精子器にある蜜腺・発香腺を観察するため、イタドリに寄生しているサビキンの精子器の切片をプラントミクロトームで作成し、光学顕微鏡で観察した。しかし、形態学的に明瞭な腺構造が見られなかったため、センニンソウ上のサビキンのプラントミクロトーム切片をSudan Black Bで染色した。このサンプルでは胞子は観察されたが、発香腺に関しては特定できなかった。 精子器の蜜腺における花蜜腺遺伝子CRCの発現をイタドリ、センニンソウ、ナシ、カリン、ヘクソカズラで調べるため、まずこれらにおけるCRC遺伝子の配列を決定した。抽出DNAを鋳型にCRC遺伝子のユニバーサルプライマーを用いてPCRを行い、センニンソウ、ナシ、ヘクソカズラで増幅産物を得た。塩基配列決定をした。センニンソウとナシでは、それぞれキンポウゲ科、バラ科のCRC遺伝子のmRNA配列とアラインメントし、イントロンを含むようにプライマーを作成した。 このプライマーを用い、センニンソウとナシの花の蕾から抽出したRNAから得たcDNAを鋳型としてPCRを行ったところ増幅が見られたことから、蕾で CRC遺伝子が発現していることが確かめられた。しかし、サビキンの感染部位からRNAを抽出したところ、蜜生産ステージでも蜜生産ステージ以外でも、CRC遺伝子の発現は見られなかった。この結果はサビキンが植物の蜜生産遺伝子を発現させているという仮説を支持しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精子器の切片観察は、明瞭な結果を得ることができていないが、今後パラフィン切片を作成するなどの方向性をつけることができた。 CRC遺伝子の発現を調べることはいくつかの困難が予想されたが、ユニバーサルプライマーにより増幅を得ることができ、そこから対象植物のCRC遺伝子の配列を決定することに成功し、発現を見るのに適したプライマーを設計することができた。揮発性成分合成系遺伝子の発現解析には着手できなかったが、その解析にはCRC遺伝子の発現を調べた時のサンプルをそのまま鋳型として用いることができるので、今後すみやかに進めることができる。 また、次年度に揮発性成分の同定が計画されているが、そのためのより適した採集法を検討する機会があり、実施に向けて準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
精子器の切片観察は、明瞭な結果を得ることができなかったため、今後パラフィン切片を作成する。 揮発性成分合成系遺伝子の発現解析は、CRC遺伝子発現と同じスキームで進められるため、速やかに進め、CRC遺伝子の発現を調べた時のRNAサンプルをそのまま鋳型として、蕾とサビキン感染部位(蜜生産ステージおよび蜜非生産ステージ)で発現解析を行う。 揮発性成分の採集には、当初これまでに広く用いられていたヘッドスペース法とSPME法を検討していたが、より簡便に行えるtwisterと呼ばれる微小な採集装置を用いて採集を行い、GC-MSを用いて分析することを検討している。精子器と非感染部位で同時に揮発性成分を採集し、比較することによりサビキンの精子器に由来する揮発性成分を特定する。また各寄主植物の花からも香りを採集し同様にGC, GC-MSで分析する。これをナシ、センニンソウおよびヘクソカズラで行い、得られたデータを判別分析し、サビキン間で類似するか、各サビキンの揮発性成分が寄主植物の花香と類似するのかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
顕微鏡観察、揮発性成分分析、遺伝子の発現解析に消耗品の購入を必要とする。また、揮発性成分の分析に京都大学生態研センターのスタッフの指導協力をあおぐため、旅費を必要とする。また、野外調査および成果発表旅費も予定している。その他としてDNAシーケンスおよびGC-MS分析料への使用を計画している。
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