2011 Fiscal Year Research-status Report
里草地の生物多様性減少メカニズムの解明ー圃場整備と耕作放棄の影響評価
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23570024
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70399327)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 半自然草地 / 維管束植物 / 食植生昆虫 / 土地利用 / 生物多様性 / 圃場整備 / 耕作放棄 |
Research Abstract |
本申請課題では水田の土地利用の変化による周囲の半自然草地(里草地)の植物・植食性昆虫群集の変化(種多様性減少、種組成の変化)を定量化し、その変化を引き起こすメカニズムを解明することを目的とする。圃場整備や耕作放棄によって引き起こされる植物群集(多様性・種組成・植物高)の変化は、異なるプロセスを通じて植食性昆虫(チョウ・バッタ)群集の多様性の減少・種組成の変化を引き起こす』の検証を行う。この研究を通じて世界的に進行する農業生態系における生物多様性減少のメカニズムの解明に貢献する。 兵庫県南東部の31の農地、それぞれ4区画(一区画の面積は5m×50m)、計124区画において5月から10月の毎月、確認された維管束植物の種数および開花種、開花量と、チョウ群集は5月から10月の毎月調査、バッタ群集は8月中旬から9月末までの間に2回調査を実施し、種数および個体数を定量化した。それぞれの群集を機能群ごとにグループ化し、植物群集と植食性昆虫群集の多様性相関関係を解析した。 その結果から、多年生植物、チョウおよびバッタ群集の種多様性は、伝統的営農地で最大であること、一方で一年生植物は集約的営農地と伝統的営農地で種多様性は高く、放棄地では低いということが確認された。また、この差は、土地利用形態ごとの攪乱の動態(草刈り頻度)に起因することを明らかにした。さらに、チョウ群集およびバッタ群集に主に影響を与えている植物群集は、蜜源・餌資源となる多年生植物であり一年生植物の影響は小さいことが明らかとなった。また、チョウ・バッタにおいては多様性減少に影響を与える要因がそれぞれ異なっていた(チョウは多年生草本種数と開花量、バッタは多年生草本種数と植生高)。本研究結果から、半自然草原における植食性昆虫群集の多様性減少は、資源である植物のうち特定の機能群の多様性が変化することが要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、共同して研究を行っている研究室大学院生(内田圭)が昨年度、非常に精力的に野外調査をこなし、当初予定していた、維管束植物、チョウ・バッタ類の農地の土地利用の変化に対する反応を一年分のデータで概ね確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度(23年度)に確認した植物、チョウ・バッタ類の農地の土地利用との関係について再現性がある結果であるのか今年度も野外調査を繰り返し確認する。 また、昨年度のデータから、伝統的営農地間で植物や植食性昆虫類の多様性に差があることが確認できたので、調査対象とした農地の周辺環境(伝統的営農地や人工地の広がりなど)の影響についても研究を行う。具体的にはGISによって、周辺(周囲500m-2km以内)の伝統的営農地や半自然草地率や人工地率を求め、それぞれの調査における多様性への影響を解析する。 さらに圃場整備地での植生の変化について、土壌環境の変化の影響を調べるため、農業環境技術研究所の平舘俊太郎氏らとともに圃場整備地と伝統的営農地の植生調査および土壌環境(土壌pHや有効リン酸体量など)測定のためのサンプリングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の主な研究費の使用用途は、野外調査のための物品購入、旅費、調査補助者への謝金、土壌分析実験のための物品購入、GIS解析補助者への謝金、解析用ソフトウェアの購入、学会・研究への参加旅費である。
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Research Products
(6 results)