2014 Fiscal Year Annual Research Report
里草地の生物多様性減少メカニズムの解明ー圃場整備と耕作放棄の影響評価
Project/Area Number |
23570024
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 土地利用変化 / 耕作放棄 / 圃場整備 / 植物多様性 / 植食性昆虫多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では水田の土地利用の変化による周囲の里草地の植物・植食性昆虫群集の変化(種多様性減少)を定量化し、その変化を引き起こすメカニズムを解明することを目的とした。平成23-24年度の調査結果から、圃場整備や耕作放棄によって植物および植食者群集の単位面積(250m2)あたりの多様性が大きく減少することを明らかにした。また、植物の多様性減少は、土地利用の変化に伴う草刈り頻度の変化(増加もしくは減少)および周辺景観の変化によるものであること、植物(特に多年生草本)の多様性の減少が植食性昆虫(チョウ・バッタ)群集の多様性の減少・種組成の変化を引き起こすことを明らかにしてきた。また、個々の種の減少は、種の持つ生態的特徴(食性幅、サイズ等)に依存しておらず、有占度の低い種ほど土地利用によって消失しやすいことが明らかになり、ランダムロス仮説によって説明可能であることを示すことができた。この内容は、共同して研究を行っている研究室大学院生(内田圭)とともに投稿論文としてまとめ、アメリカ生態学会の機関誌Ecological Monograph誌にて2014年(平成26年年度)に発表した。 また、同データを用いて、圃場整備や耕作放棄によって植物および植食者群集の棚田内のベータ多様性(棚田内種数)も大きく減少していることを明らかにした。このとき、棚田内の環境の不均質性はまだ維持されていることが示唆され、草刈り頻度を年2-3回とすることで、棚田でみられる植物・植食性昆虫の多様性が復活することが期待されることがわかった。本内容は、イギリス生態学会の機関誌Journal of Applied Ecology誌において、2015年(平成27年年度)にオンラインで発表した。 本研究は、耕作放棄と圃場整備の生物多様性への影響を包括的に扱った初めての研究であり、今後の世の中への成果の普及が期待される。
|