2012 Fiscal Year Research-status Report
意思決定の進化生態学的基盤:負け記憶の生態遺伝メカニズム
Project/Area Number |
23570027
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80332790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 賢祐 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (40550299)
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Keywords | 行動生態 / 昆虫 / 闘争 / 記憶 / 生体アミン / 表現型可塑性 |
Research Abstract |
本研究計画の大きな目的の1つは闘争と記憶に焦点を当てたものであり、闘争と武器形質のモデル昆虫を使用して、以下の研究を展開した。本種のオスは敗北経験を覚えている間は、まったく戦わない。すなわち、戦いに投資を行わないのだが、その代わりに射精形質への投資を増やした。この結果は、オスが敗北経験による学習によって、交尾後のオス間競争である精子競争の投資を調整することを示している。学習によって行動や形質への投資を調整することで、このオスは効率良くメスを獲得することができるのだろう。またこのオスの交尾行動に関係する形質への投資配分には、遺伝的な基盤があり、また幼虫時の発育条件で投資配分も変化することがわかった。本来行動をおこさないメスにも影響が出ることがわかった。特に、記憶メカニズムに関与する上述した形質については、複雑な関係性を示す表現型上の統合が明らかとなり、今後、記憶メカニズムと関係性に焦点を絞ることができる。さらには、いくつかの生理活性物質が、我々が扱っている昆虫において、闘争行動や繁殖に関係する物質に大きく寄与することが明らかとなった。この成果によって、我々は特定の遺伝子をターゲットすることができる。このデータより、RNA干渉法や定量的PCRと言った分子生物学的な手法を使い、遺伝子レベルで記憶メカニズムの解明に着手できる。これら結果は、国内外の学会等で高い評価を受け、一部は専門の国際誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の本研究計画の目的の1つとした闘争と記憶の関係について、闘争と武器形質のモデル昆虫としてのオオツノコクヌストモドキを使用して、オスは敗北経験を覚えている間はまったく戦わない。すなわち、戦いに投資を行わないのだが、その代わりに射精形質への投資を増やしすことを定量的に解析できた。この結果は、オスが敗北経験による学習によって、交尾後のオス間競争である精子競争の投資を調整することを示している。学習によって行動や形質への投資を調整することで、このオスは効率良くメスを獲得することができることがわかった。またこのオスの交尾行動に関係する形質への投資配分には、遺伝的な基盤があり、また幼虫時の発育条件で投資配分も変化していた。とりわけ記憶メカニズムとオス間の闘争に関わる行動・形態形質の間には複雑な表現型可塑性を示すこと、及び遺伝的基盤もあり、それらの基盤がいつくかの生理活性物質に支配されていることが明らかとなった。関係性を示す表現型上の統合が明らかとなり、今後、記憶メカニズムと関係性に焦点を絞ることができる。これら結果は、国内外の学会等で高い評価を受け、とくに欧米の行動生態学会(スウェーデンで成果をはっぴょしたISBE)ではとても高い評価を受け、それらの結果の一部は専門の国際誌に掲載されている。今後は、遺伝子基盤の解析と生理生態学的および薬理学的な解析までをも行う目処がついたため、当初野計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
武器甲虫のモデルとして、オオツノコクヌストモドキの遺伝的に闘争行動が異なる系統間で、生体アミン類が及ぼす影響や、武器形質の遺伝的基盤について解析をすすめる。幼虫時の発育条件で投資配分も変化していた。とりわけ記憶メカニズムとオス間の闘争に関わる行動・形態形質の間には複雑な表現型可塑性を示すこと、及び遺伝的基盤もあり、それらの基盤がいつくかの生理活性物質に支配されている仕組みについてもさらに解析を行う。また、これまでに当初の計画以上の進展が見られているため、今後は記憶や経験モデルとしては、甲虫以外の昆虫(カメムシなど)や両生類も用いて、過去に経験した記憶が生物の行動や生活史にどのような影響を及ぼすのかについても新たに研究を展開し、生物における過去の経験によって修飾される生物の行動と意志決定、そしてそれが生活史に及ぼす影響についても研究を添加会する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の課題を遂行するにあたって、以下の消耗品費(シークエンス解析代金を含む)と、調査研究旅費及び成果発表旅費を必要とする。すなわち消耗品費としては、DNA解析試薬類、シクエンサー使用量、昆虫・生物等飼育資料、関係資料図書等の購入を予定している。旅費としては、成果発表旅費(日本動物行動学会[広島]・日本生態学会[広島]・個体群生態学会[大阪]・時間生物学会[大阪]ほか)、調査研究旅費(資料調査旅費[東京]・試験生物採集旅費[沖縄]ほか)の執行を予定している。
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Research Products
(11 results)