2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハイマツ植生による大気からの水及び窒素吸収にかかわる生理生態学的機構の研究
Project/Area Number |
23570030
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久米 篤 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20325492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
智和 正明 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30380554)
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Keywords | ハイマツ / 物質循環 / 湿性沈着 / 葉面吸収 / 安定同位体 / 立山 / 広域大気汚染 / 黄砂 |
Research Abstract |
日本の山岳植生の特徴付けるハイマツは,保水性が乏しく貧栄養な土壌条件下で亜高山針葉樹林に匹敵する多量の針葉を保持している。そのため,降雨が樹冠遮断(蒸発)されて林床への水供給が妨げられているが,風が強く霧や露が高頻度で発生する山岳環境においては,水滴の樹冠への衝突による水分付着量も多くなる可能性がある。また,霧水には雨水よりも硫黄酸化物や窒素化合物が高濃度で含まれている。そこで,1)ハイマツ植生表面による霧・露からの捕水および水分吸収,2)ハイマツ植生が植生地上部からの窒素吸収量・栄養塩吸収・溶脱量に及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした。 1)標高2860m の立山・浄土山周辺で,降雨,霧,露,気温,日射,風向風速の連続観測を行なった.その結果,植物フェノロジーと気象環境との間の複雑な関係が明らかになった. 2)林冠との相互作用を評価するためにハイマツ林内と林外に多数のGutter型採雨器を設置し,ハイマツ群落の有無が霧水獲得に及ぼす影響を調べた。さらに,既存のパッシブ型霧採取器によって霧水を採取し,風向風速や濡れ時間,湿度,降雨の情報と統合することで,地表面への霧水沈着量を評価した。これらの採水量と,通常の転倒マス雨量計の結果を比較することで,通常の降雨量データと,実際に植生上に供給される水量の違いを明らかにした。 3)採水したサンプルについては,イオンクロマトグラフを用いて陽イオン成分や窒素含有量を測定し,林外雨・林内雨,霧水雨水との間で比較した.また一部のサンプルについてはSr同位体の分析を行い,林冠における供給-濃縮過程を明らかにした。ハイマツは大気から高い割合で窒素成分を吸収すると同時に,ミネラル成分,特に黄砂成分を針葉表面から吸収していること,樹体からの陽イオンの溶脱,特にK+イオンについては,表面の濡れ時間とSO42-イオンの供給量に相関していることが明らかになった.
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Research Products
(6 results)