2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570039
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
香取 郁夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (00319659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 尚 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (60335635)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学習速度 / 2モード学習 / 訪花学習 / モンシロチョウ |
Research Abstract |
12色の色紙で作られた人工花を用いて生得的選好性を調査し、雌雄別に生得的に特に好む2色を特定した。また、花香としての3種の匂い成分の単体と3種を混合させた匂い成分を用いて匂いの生得的選好性を調査し、モンシロチョウの成虫が生得的に好む匂い2成分を特定した。学習性を調べる実験では3つの過程を経て実験を行った。「学習前テスト」過程では生得的に好む2色の色と2種の匂い成分を用いて組み合わせの異なる4種類の人工花(蜜なし)をつくり、各個体に10訪花させた。「トレーニング」過程では1種類の人工花のみ(黄色・メチルヘプテノン)を用いて蜜ありの状態にして色と匂いの同時条件付けを行った。「学習後テスト」過程では学習前テストと同一の4種類の人工花(蜜なし)を呈示し各個体に10回訪花させ、それを記録した。そしてトレーニングの前後で訪花パターンを比較することでチョウがどのように学習したかを調べた。すべての実験はプレハブ恒温室内で人工照明下で行われた。 実験の結果、モンシロチョウの雌雄両方が色の選好性について、青、黄、紫の順に選好した。匂いの選好性については 2-フェニルエタノール、メチルヘプテノン、フェニルアセトアルデヒドの3成分の混合が匂いなしに比べ最も強く選好された。単体のメチルヘプテノンとフェニルアセトアルデヒドも匂いなしより選好された。2-フェニルエタノールは匂いなしとの間に有意な差は見られなかった。学習性を調べる実験に関しては、各回40個体以上の新成虫を導入し、4回実験をスタートしたが、途中で死亡する個体、訪花しない個体が多く実験を終了した個体は皆無だった。実験室内をもっと加湿する、水のみ場の確保、風量を弱める等、成虫の寿命を延長する環境づくりが必要と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初1年目に結果を出す予定であった色と匂いの2モード学習実験が、理由不明のチョウの寿命短縮などの影響で結果を出せなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はすべての実験をプレハブ恒温室で行った。その結果、モンシロチョウの選好性については色は黄色と青、匂い成分はメチルヘプテノンフェニルアセトアルデヒドを生得的に好むという結果を得られた。一方、2モードの学習性に関してはトレーニングの期間中に死亡個体が続出し、実験を終了した個体は皆無だった。その原因として恒温室の風が強く、湿度も40%と乾燥気味だったためチョウが水不足により脱水状態に陥ったためと思われる。そこで次年度は恒温室内での実験を避け、野外網室で実験を行う予定である。また、今年度は色(2種類)と匂い(2種類)の組合せの異なる4種類の人工花を用いて条件付け後の選択実験を行ったが、それでは1個体の訪花数が10訪花と非常にたくさん必要なので実験期間が長引いてしまった。そこで次年度は匂いの学習のみに絞り実験を行う。具体的には色は1種類のみで、匂いの異なる2種類の人工花を用いて条件付け後の選択実験を行い、チョウの必要な訪花数を1個体あたり5訪花に減らし、寿命が来る前に実験を終わらせられるように配慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験1:匂いの学習実験モンシロチョウが訪花吸蜜時に嗅覚学習するのかどうかを実験により確かめる。材料としてモンシロチョウ新成虫は1実験に約200匹必要でありこれを数回繰り返す。チョウを飼育羽化させるための圃場における食草の栽培管理に培養土やアブラナ科植物の苗などを購入。チョウ幼虫の大量飼育のために飼育容器や脱脂綿などの飼育道具・材料も大量に購入。さらに次年度より生育不適な季節(盛夏、真冬)も幼虫飼育と実験を続行できるように人工飼料を作成し幼虫の飼育に利用する。そのため人工飼料作成用の様々な薬品や栄養剤、調合用の器具を購入。人工花、10%ショ糖溶液作成のための計量用具や色紙の購入。花香2種を用いた人工花作成のための花台、エッペンドルフチューブなどの購入。実験2:色と匂いの2モード学習実験実験1で予想通りチョウがにおいを学習した場合は、次に色と匂いの2モード学習実験を行い、チョウが色と匂いを同時に学習しているかどうかを確かめる。その際もモンシロチョウ新成虫は大量に必要となってくるので上記飼育資材、実験用具の購入がさらに必要になってくる。
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