2014 Fiscal Year Annual Research Report
環境変化に対する生物群集の応答と機能形質動態に関する数理生態学的研究
Project/Area Number |
23570040
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
田中 嘉成 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (60338647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 正史 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00145658)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 群集生態学 / 機能形質 / 生態系機能 / ロトカボルテラモデル / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境変化に対する生物群集の応答は、おもに構成種の種構成や相対頻度が種の環境耐性の違いに応じて変化することで生じると考えられる。そこで、人為的環境かく乱要因(富栄養化、化学汚染、温暖化など)が生態系に与える影響を群集構成種の機能形質の分布変化(バイオマス荷重平均の変化)として予測する数理モデルの研究を行った。特に、環境の確率的な変動が、群集内の形質分布に与える影響を解析するために、多次元レプリケーター方程式に基づいた形質動態の解析を進めるとともに、Chesson and Warnerのロッタリー競争モデルに、環境フィルター効果と資源競争を組み込んだ一般化した群集モデルを作成した。ロッタリー競争モデルは、群集形成過程における確率性が多種共存を可能にすることを説明する最も一般的な理論であり、生物群集の中立説の理論的背景にもなっている。単純な統計的モデルに基づいた解析の結果、群集内の種形質の分散が環境フィルター効果によって減少し、資源競争によって増加する一般的傾向が把握できた。群集形成過程における確率性が増加し(もしくは環境フィルターおよび資源競争効果が減少し)、中立群集に近くなった場合、このような決定論的予測がどの程度成り立つかを今後シミュレーションによって調べた。このことによって、一般的に言われている種ランク(種の個体頻度の多い順序)と種頻度との関係が、確率的な予測から外れないまま、形質動態の決定論的プロセスが成立する条件を示し、形質ベースアプローチの一般性が準中立群集でも成り立つかどうかを今後明らかにしたい。
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