2011 Fiscal Year Research-status Report
表在性タンパク質の脂質修飾と光合成の高温耐性に関する研究
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23570049
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
水澤 直樹 法政大学, 生命科学部, 准教授 (80342856)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光化学系2 / 光合成 / 高温ストレス / シアノバクテリア / 脂質 |
Research Abstract |
1. PSII標品の粗精製と表在性タンパク質の解析 Anabaena sp. PCC 7120の表在性タンパク質の脂質修飾を確認するためには、表在性タンパク質をPSII複合体に結合した形で精製する必要がある。予備実験によりAnabaenaから単離したチラコイド膜を界面活性剤で可溶化後、グリセロール密度勾配遠心にかけることでPSIIに富む画分を得ることが可能であることがわかっている。本年はさらに簡便な手法として、チラコイド膜のBlue-nativeゲル電気泳動によりPSIIに富む画分を得ることができるかどうか試したところ、本法でもPSIIに富む画分を得ることができた。これら2つの方法を今後の研究で適宜使い分けて用いることとした。2.Anabaena sp. PCC 7120における酸素発生活性測定の最適化条件の検討 予備実験から、Anabaenaは従来の光合成研究に用いられるSynechocystis sp. PCC 6803とは、最適の光合成活性(酸素発生活性)を発揮するための人工電子受容体の種類、濃度が異なることが示唆されたので、Anabaenaのチラコイド膜と細胞を用いて、酸素発生活性の至適条件を検討した。その結果、Anabaenaではp-ベンゾキノンを加えた時に最大活性を示すことがわかった。本条件でAnabaenaの光合成の熱安定性を解析する予定である。3.Anabaena sp. PCC 7120の表在性タンパク質PsbOを発現するSynechocystis sp.PCC 6803変異株の作製 Anabaena sp. PCC 7120の表在性タンパク質がAnabaena においてPSIIの安定化に寄与しているかどうかを調べるためにAnabaena sp. PCC 7120のPsbOをSynechocystisに遺伝子導入した株を作製する準備をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は本年度8月に東京大学を退職し、9月に法政大学に転任した。東京大学在職期間中に、光合成の熱安定性を調べるための生化学的解析、光合成的解析などの実験手法を確立するとともに、シアノバクテリア変異体作製の準備を行っていた。しかしながら、法政大学着任後、下記のような事情があり、研究に遅延を生じている。着任時に提供された研究室が実験を行うためには不備があり、水道工事、電気工事などが必要であった。そこで、工事計画を進めていたが、その過程で、実はこの研究室は大学の取り決めで工事ができないことがわかった。その後、大学側と協議して、研究室スペースを提供して貰えるように話し合いを続けてきたが、年度末までには結論が得られず、その間、約7ヶ月間ほぼ研究が停止することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度9月に法政大学に着任したが、割り当てられた研究室が実験を遂行するための適切な設備を有していなかったため、新たな研究スペースを探さなければいけなくなった。しかしながら、年度末までにスペースが確保できず、7ヶ月間研究を停止する事態となった。そこで、平成23年度使用予定であった研究費を全額、次年度平成24年度に繰り越し、平成24年度に請求する研究費とあわせて、実験室、実験系の立ち上げ、本研究の推進を行うために使用することにした。 平成24年度はできるだけ早く、実験室を確保し、実験できる環境を構築し、法政大学での実験をスタートする予定である。平成24年度は本研究を推進するのに必要不可欠な、遠心分離機、細胞育成用インキュベーターなどの基本的な備品や光合成測定用の装置やマイクロチューブ等の実験消耗品、フラスコ、メスシリンダーを始めとするガラス器具を揃える予定である。平成25年度は備品は購入せずに試薬などの消耗品の購入を中心とする予定である。研究代表者の所属する法政大学においては、DNAシークエンサー、超遠心機など高額な機器が共通で利用できるので、このような機器を積極的に利用して、研究を推進する。また、実験室構築後は配属される卒業研究の学生や大学院生による協力も得られる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)は研究を行うのに必要な基本備品として、微量高速遠心機、細胞育成用のインキュベーターを、光合成測定装置として酸素電極を購入することを予定している。メスシリンダー、ビーカー、フラスコなどのガラス器具、プラスチックチューブ類、変異体の作製に必要な分子生物学用の試薬、生化学的な解析に必要な生化学用試薬なども購入する予定である。平成24年度は実験室、実験系の構築に重点をおき、出張費は国内学会への出席のための旅費にとどめる予定である。
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