2012 Fiscal Year Research-status Report
表在性タンパク質の脂質修飾と光合成の高温耐性に関する研究
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23570049
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
水澤 直樹 法政大学, 生命科学部, 准教授 (80342856)
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Keywords | 光化学系2 / 光合成 / 高温ストレス / シアノバクテリア / 脂質 |
Research Abstract |
1. PSII(光化学系II)標品の精製と表在性タンパク質の解析 Anabaena sp. PCC 7120の表在性タンパク質の脂質修飾を確認するためには、表在性タンパク質をPSIIに結合した状態で精製する必要がある。これまでに粗精製まではできているが、この精製レベルでは表在性タンパク質の脂質修飾を確認するには純度が不十分であることがわかった。そこで、AnabaenaのPSII構成蛋白質の一つCP47にHis-tagを結合する変異株を作製し、本株を細胞破砕後His-tagを用いたNi-カラムでPSIIを精製することした。平成24年度、ほぼ変異株の作製は完了した(現在、得られた形質転換体のDNAシーケンスの最終checkをしている)。 2.Anabaena sp. PCC 7120の高温耐性、ストレス耐性の検討 Anabaenaの高温耐性と乾燥耐性をプレート培養下でのストレス実験により検討した。Anabaenaは他のシアノバクテリアSynechocystis sp.PCC 6803と同様に40℃の高温でも増殖可能であり、中程度の高温耐性を示すことがわかった。乾燥ストレス、高温と乾燥の複合ストレスに対してはAnabaenaがSynechocystisよりも強い耐性を示すことがわかった。 3. 高温耐性に関係する脂質結合部位の解析 膜脂質ホスファチジルグリセロール(PG)の欠損により、高温条件下で、表在性蛋白質が解離し、PSIIが失活することがわかっている。PSIIに結合するPGは複数あるが、各々のPG結合推定部位へ部位特異的変異を導入しその変異株の特性を解析することで、高温ストレス耐性に関係するPG分子の同定を行うこととした。平成24年度はSynechocystisを用いて各種変異株を作製し、各々の株の光合成特性の解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は平成23年度に法政大学着任時は研究室スペースが確保されておらず一時研究が滞ることとなった。平成24年度も独立した研究室の確保には至らなかったが、授業などで使われていない時間帯に実験実習室で実験したり、出入り許可を認められている前職(東京大学教養学部)の実験室で実験をするなど工夫して研究を進めた。法政大学においてクロロフィル蛍光測定システムを立ち上げるなど、実験系の確立にも時間を要した。しかしながら、平成23年度に生じた遅れを平成24年度にかなり取り戻すことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
法政大学側から平成25年度早期に実験室工事をすることが確約してもらえたため、独立した実験室で研究に集中する環境を作ることが可能となった。実験環境をすみやかに整え、研究の推進・研究のまとめを行う。本年度はHis-tagを付与したAnabaenaからPSIIを単離し、表在性蛋白質の脂質修飾を含むPSII標品の特性と高温・乾燥ストレス耐性の関係の解析に力をいれる。また、PSIIにおける複数のPG結合部位のアミノ酸残基を改変した変異株の解析を行うことで、PSII上のどの部位のPGが高温耐性において重要な役割があるのかを明らかにする。 研究代表者の所属する法政大学においては、DNAシークエンサー、超遠心機など 高額な機器が共通で利用できるので、このような機器を積極的に利用して、研究を推進する。また、実験室構築後は配属される卒業研究の学生や大学院生による協力も得られる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は光合成装置の温度・乾燥ストレス応答をより詳細に解析するために、細胞培養用インキュベーター(備品)やマイクロチューブ、チップ等の実験消耗品、細胞培養用のフラスコなどのガラス器具、分子生物学・生化学の解析用の試薬を購入する予定である。
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