2012 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナの有性生殖過程における小胞体分子シャペロン依存型核膜融合機構の解析
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23570051
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西川 周一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10252222)
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Keywords | 小胞体 / 分子シャペロン / 核膜融合 / 有性生殖 |
Research Abstract |
研究代表者らは、小胞体の分子シャペロンHsp70であるBiPが、シロイヌナズナの雌性配偶体形成時の極核の核膜融合を制御していることを明らかにしている。本研究では、BiPを足がかりに、極核融合の分子機構の解明を目指している。昨年度は、BiPの制御因子である小胞体Jタンパク質の変異株の解析を行い、BiPは異なるセットの小胞体Jタンパク質(制御因子)とともに、核外膜と核内膜という2回の膜融合に機能することを明らかにした。本年度は、ライブイメージングによってこれら変異株における極核融合過程の観察を行った。まず、受精後6時間半にわたって核動態を観察する実験系を確立した。そして、受精時の精細胞と中央細胞の融合や精核と極核の融合では極核融合の欠損は回復しないことが示された。一方で、極核融合の欠損は、最初の胚乳核分裂時の核膜の崩壊と再形成によって回復することが明らかとなった。この結果は、極核の核膜融合と細胞分裂時の核膜再形成とは異なる分子機構によることを示唆する。 また、極核の外膜融合に欠損をもつ雌性配偶体は、受精時の精核と卵細胞核の融合は正常に進行するが、精核と極核の融合にも欠損を示すことを明らかにした。この結果は、卵細胞と中央細胞では雌性配偶子の核と精核との融合の分子機構が異なることを示唆する。また、融合しなかった極核と精核は最初の胚乳核分裂の際に融合するものの、その後の胚乳核分裂が異常となることから、正常な胚乳核分裂には受精時の精核と極核の融合が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ライブイメージングによる解析が予想以上に進展し、極核の核膜融合機構や極核と精核の融合機構に対する重要な知見が得られたと考えている。また、本年度確立したライブイメージング解析系は、雌性配偶体形成時の極核融合過程の解析にも適用可能と考えている。一方で、極核融合に欠損を示すシロイヌナズナ変異株のスクリーニングについては、所属の変更に伴う実験室のセットアップなどの問題で大きく進展することができなかったが、実験室のセットアップも完了したため次年度中に当初の目的を達成できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、極核融合に欠損を示すシロイヌナズナ変異株のスクリーニングを集中的に進め、極核融合の分子機構の解明を目指す。また、極核融合は核膜と小胞体膜の融合から始まることから、小胞体融合に関与することが示唆されている因子に関するシロイヌナズナ変異株の解析など、分子機構の解明を目指した研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の研究費は年度内にすべて使用していたが、事務処理手続きの関係で一部の支払いが3月31日以降になったため、次年度使用額が生じた。生じた使用額は、昨年度購入の物品費として4月以降に支払いが決定している。
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