2011 Fiscal Year Research-status Report
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23570055
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
庄司 翼 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40343272)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニコチン / 転写因子 / ジャスモン酸 |
Research Abstract |
1)ERF転写因子とジャスモン酸シグナル伝達系の関係性の解明 高等植物は普遍的なコアとなるジャスモン酸シグナル経路を持っている。タバコにもジャスモン酸伝達系を構成するCOI1,JAZ,MYC2は保存されており, いずれの機能を阻害してもニコチンのジャスモン酸応答性は失われる。特に転写因子であるMYC2はニコチン生合成遺伝子プロモーター内のG boxに結合して直接に転写活性化するばかりでなく、ニコチン制御に関わるクレード2のERFの発現も直接または間接に制御することが示された。クレード2のERFはいずれもジャスモン酸応答性を示すがその応答性はMYC2に依存するものと考えられる。2)ERF転写因子レギュロンへの一次代謝遺伝子のリクルートタバコにはQPTをコードする2つの遺伝子QPT1とQPT2(いずれもN. tomentosiformisに由来する)が存在するQPT1はすべての器官でジャスモン酸処理の有無にかかわらず構成的に発現するのに対して, QPT2は他のニコチン生合成遺伝子と同様にジャスモン酸応答性, 根特異性を示し, かつNIC遺伝子の制御を受ける。実際, ERF189の過剰発現や機能抑制型ERF189の発現はQPT2の発現にのみ影響を与えた。QPT2遺伝子のプロモーター領域には3つの機能的なERF189結合配列が存在し, いずれもERF189によるQPT2プロモーターの活性化に寄与することが, in vitro結合解析, 一過的発現系を用いたトランスアクティベーション解析, 及び, タバコ形質転換毛状根を用いたプロモーター解析から分かった。一方, QPT1プロモーターはERF189に結合せず, またその制御を受けなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究内容はERF転写因子のジャスモン酸伝達系における位置付けや本因子の統括する生合成レギュロンの進化に関する洞察を与えるものである。筆頭著者としての2編の論文発表を含む多くの成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
タバコNIC2-locus ERFであるERF189に関してはその結合配列特異性が解析され、ERF189結合性シス配列がニコチン生合成遺伝子プロモーター上に複数個推定された(投稿中)。一方、ニチニチソウORCAに関しては同様の知見はない。これまでに申請者はORCA3がERF189とは若干異なる結合特異性を持つことを確認した。この結合性の違いは両者のDNA結合ドメイン内の構造的差異に起因すると考えられる。ニチニチソウORCA3の結合特異性とそれを基にインドールアルカロイド生合成遺伝子プロモーター内のORCA結合配列を決定し、ORCA3とタバコERF189の結合性の違いを明らかとする。また、DNA結合性ドメイン内の両者間に構造上の差異に注目し、ドメインの一部を互いに置換した組換えタンパク質の結合特異性を検討する。最終的に、結合性の差異を決める1つまたは複数のアミノ残基を決め、NIC2/ORCA型ERF転写因子の分子進化について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品の購入は予定していない。消耗品、試薬代を中心に研究費使用を計画している。旅費とその他経費については特に計画していないが、必要に応じて適宜使用する予定である。
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