2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570055
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
庄司 翼 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40343272)
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Keywords | 転写因子 / 分子進化 / アルカロイド / ジャスモン酸 |
Research Abstract |
AP2/ERFスーパーファミリーのグループIXaには、GCC boxの認識を介してPRタンパク質遺伝子などの制御に関わるAtERF1(上述)に加えて、ニコチン生合成系遺伝子群を制御する複数のタバコERF (ERF189, ERF179, ERF163など)、及び、インドールアルカロイド生合成を制御するニチニチソウORCA3など、植物の化学防御の制御に関わるERFが数多く属している。グループIXaメンバーは、比較的少数のアミノ酸配列の違いを基に、さらにいくつかのclade ( clade1;AtERF1, clade2-1;ERF189, clade2-2;ERF179, clade2-3;ERF163, ORCA) に分割できる。 グループIXaの各メンバーが、GCC boxやニコチン及びインドールアルカロイドの生合成遺伝子プロモーター上に見出された複数のGCC box様結合配列に、どのような結合特異性を、in vitro及びin vivoで示すのか、それぞれEMSA法及びトランスアクテイベーション解析で検討した。その結果、結合配列は部分的に重複しつつも、各cladeごとに結合特異性が区別できることが分かった。特に、塩基認識に関わるbeta-strand部分のいくつかの残基の着目し、アミノ酸置換による結合特異性への影響を解析することで、配列特異性の違いに重要な3つの残基を決定した。 遺伝子重複などにより多重化したグループIXa遺伝子は、配列特異性に関わる少数の残基の置換を通じて、その認識配列、及び、制御標的遺伝子を変え、機能を多様化させてきたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転写因子のDNA結合特異性の違いに注目し、その構造学的基盤を明らかにすることで、アルカロイド制御転写因子の機能重複、機能分化について洞察を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ニコチンのみならず、ジャスモン酸や傷害刺激により蓄積が誘導される代謝産物は多い。一般に、傷害応答性の代表される代謝のエリシター・ホルモン応答性は植物間で比較的保存されている。実際、タバコNIC2の相同因子(NIC2型転写因子)は、ニコチンを合成しないタバコ以外の植物種にも広く存在している。タバコと同じナス科に属するトマト(Solanum lycopersicum)にも、複数のNIC2型転写因子遺伝子が存在し、タバコ遺伝子と同様にジャスモン酸誘導性を示す。トマトNIC2型転写因子の標的代謝系を明らかにするために、ドミナント抑制型転写因子をトマトで強制発現させることにより、多重転写因子遺伝子を機能抑制し、ジャスモン酸処理条件下で特異的に発現抑制される遺伝子群を、cDNAマイクロアレイ解析で網羅的に検索する。同様に、標的代謝産物を見出すため、蓄積が変化する代謝産物群をLC-MSを用いたメタボローム解析(理化学研究所との共同)で網羅的に検索する。オミックス解析を活用することでトマトにおける新規の“NIC2型転写因子―酵素遺伝子―代謝経路”の全容解明を目指す。標的代謝系を解明することで、本因子の代謝制御因子としての普遍性、汎用性を示し、タバコ以外の植物種における機能解析、分子育種への応用に展開していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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