2011 Fiscal Year Research-status Report
植物に広く存在する機能未知青色光受容体様LOVタンパク質の機能解析
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23570065
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 賢洋 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (70361748)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光受容体 |
Research Abstract |
光は植物が生育環境に適応するために使われる最も重要な環境情報であり、生活環を通して様々な場面で情報として利用される。光情報を受容するために、数種類のタイプの光受容体がこれまでに同定されている。植物ゲノムを検索すると、LOVドメインを有する機能未知のLOVタイプ光受容体様分子の遺伝子が見つかる。コケ植物から被子植物まで存在し、陸上植物で保存されている。フォトトロピン同様分子内に2つのLOVドメインが存在することから、LOV/LOVタンパク質(LLP)と名づけ、生化学的な解析により光受容体として働き得るタンパク質であることを明らかにしてきた。本研究課題は、LLPの生理機能を調べ、LLPが関わる光応答機構を解明することを目標としている。本年度は、ヒメツリガネゴケLLP遺伝子破壊株の表現型の解析と、酵母2ハイブリッドスクリーニングによりLLPの結合タンパク質として得られたリンゴ酸脱水素酵素(MDH)の酵素活性にLLPがどのような影響をあたえるかを中心に解析を行った。ヒメツリガネゴケにはLLPが2コピー(LLP1とLLP2)存在するが、いずれの蓄積量も暗条件より明条件で高かった。また、乾燥処理、低温処理、高塩処理、ABA処理を行ったところ、若干ではあるが、すべての処理でmRNAの蓄積量は増加した。LLP1LLP2二重破壊株を様々な条件で培養して表現系を解析した。連続明条件でLLP1LLP2二重破壊株のコロニーサイズが野生株にくらべてわずかに大きくなった。さらに注意深く解析する必要があるが、LLPが原糸体の伸長生長に関与している可能性が考えられた。LLPとMDHの組換えタンパク質を精製後、両者を混合し、MDHのリンゴ酸生成側の反応と、オキサロ酢酸生成側の反応を光照射の有無等の条件で測定した。その結果、MDHの両酵素活性はLLPおよび光の影響を受けないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) これまでにLLP遺伝子破壊株をヒメツリガネゴケで構築した。これはLLP遺伝子が欠損した唯一の植物であり、LLPの機能を解明していく上で非常に強力な材料となり、大きな成果である。(2) 2ハイブリッドスクリーニング法で得られた結合タンパク質の1つであるMDHが、酵母細胞において、暗条件で結合し、明条件で解離することが分かった。LLPの機能が光依存的であることを示す結果であり、LLPの光受容体としての働きを示す重要な結果である。詳細なin vitroでの解析の結果、MDHの酵素活性には影響がなかった。MDHとの結合について酵素活性調節以外の生理的機能を考える必要がある。(3) LLP1LLP2二重破壊株を用い、表現型の解析を行った。栄養条件(窒素源、炭素源の種類、濃度のちがい)、光条件(光強度、白色光、赤、青の単色光、明暗サイクル;連続明条件、長日条件、短日条件)、植物ホルモンの添加(オーキシン、サイトカイニン、ABA)で生育の違いを解析した。その結果、連続明条件でコロニーサイズがわずかに大きくなり、原糸体の伸長が早い結果を得た。LLPの生理機能を考えていく上で重要な手がかりになると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 当初、LLP1LLP2破壊株と野生株の間でトランスクリプトームの比較解析を行う予定だった。解析費用が高額であるため、表現型を慎重に解析し、両者の間で確実に差が出る生育条件を検討してから行うこととした。コロニーサイズに違いがでるものの、さらに顕著な違いの出る条件を検討したが見つからなかったため、本年度はトランスクリプトーム解析を見送り、次年度以降にその分の解析予算を回すこととした。さらに注意深く解析をすすめて条件を見つけ、トランスクリプトーム解析を行う予定である。(2) ヒメツリガネゴケは体制が単純で観察が容易であることが長所である一方、単純なために表現型が出にくいという短所ともなる。そこで、シロイヌナズナのLLP遺伝子破壊株を構築し、LLP機能の解明を目指していく。米国、ドイツでストックしているシロイヌナズナの変異株バンクには、LLPに変異が入った株がないため、RNAiによるノックダウン株の構築を行う。(3) 複合的に異なる培養条件を試し、ヒメツリガネゴケLLP破壊株で表現型を見つけることを継続していく。特に培養時の光質を白色光から青色光に換えることを計画している。青色光にすることで、LLPの生育への寄与が大きくなり、生育への影響が出やすくなる可能性があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生育条件の検討に必要な培養器の購入、実験に必要な分子生物学試薬など消耗品の購入を計画している。また、ヒメツリガネゴケLLP破壊株のトランスクリプトーム解析を行う。シロイヌナズナのノックダウン株の構築に必要なベクターの購入なども計画している。
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Research Products
(2 results)