2012 Fiscal Year Research-status Report
植物に広く存在する機能未知青色光受容体様LOVタンパク質の機能解析
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23570065
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 賢洋 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70361748)
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Keywords | 光受容体 |
Research Abstract |
光は植物が生育環境に適応するために使われる最も重要な環境情報であり、生活環を通して様々な場面で情報として利用される。光情報を受容するために、数種類のタイプの光受容体がこれまでに同定されている。本研究は、LOV/LOVタンパク質(LLP)と名づけた、コケ植物から被子植物まで存在し、陸上植物で保存されている光受容体様タンパク質の生理機能を調べ、LLPが関わる光応答機構を解明することを目標としている。 本年度は、ヒメツリガネゴケLLP遺伝子破壊株と野生株の間のトランスクリプトーム比較を行うために、解析に用いるLLP遺伝子破壊株と光処理条件の検討を慎重に行った。野生株とLLP遺伝子破壊株(AB1株)の原糸体を、連続白色光下で7日間培養後、赤色光(30 μmol m-2 s-1)で3日間処理して試料を回収、さらに赤色光を背景に青色光(10 μmol m-2 s-1)を2時間照射して試料を回収した。これらのサンプルからRNAを調製し、青色光によるトランスクリプトーム変化を調べるために、次世代シーケンサー(Illumina HiSeq2000)によりそれぞれから約5千万リードのデータを得た。現在、ゲノム情報へのマッピングと比較解析を行っているところである。また、シロイヌナズナLLPについての解析を行うために、RNAi法によるLLP遺伝子発現ノックダウン株(LLP-RNAi株)の構築とLLPプロモーターGUS株(PLLP-GUS株)の構築を行った。現在までにT2世代を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① LLPの組換えタンパク質を用いた生化学的な解析により、LLPにFMNが結合し、フォトトロピン同様に光依存的に光吸収変化を示すことから、LLPが光受容体として働き得るタンパク質であることを明らかにした。さらに、2ハイブリッドスクリーニング法で得られたLLPの結合タンパク質の1つであるMDHが、酵母細胞において、暗条件で結合し、明条件で解離することからLLPが光依存的な機能を持つことが示唆された。さらに、LLP遺伝子破壊株をヒメツリガネゴケで構築した。LLP遺伝子破壊株を用いて培養条件を網羅的に変えて表現系の解析を行い、栄養条件(窒素源、炭素源の種類、濃度のちがい)、光条件(光強度、白色光、赤、青の単色光、明暗サイクル;連続明条件、長日条件、短日条件)、植物ホルモンの添加(オーキシン、サイトカイニン、ABA)では顕著な差は生じないことが分かった。一方、GFPをノックインしたLLP-GUS株で細胞内局在を観察すると、LLPは細胞質と核に局在することから、LLPが遺伝子発現調節に働くことが示唆された。そこで、野生株とLLP遺伝子破壊株のトランスクリプトームの違い(特に、青色光照射による違い)に差が見られると予想して次世代シーケンサーでデータを取得した。データ解析によりLLPが関わる生理現象が見えてくることを期待できる。 ② シロイヌナズナでLLPの解析を進めるために、RNAi法によるLLP遺伝子発現ノックダウン株(LLP-RNAi株)の構築とLLPプロモーターGUS株(PLLP-GUS株)の構築を行い、現在までにT2世代を得た。両組換え体の解析によりLLPの機能の解明が進むことを期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
① トランスクリプトームの比較解析を行う。野生株において青色光照射でmRNA 量が変化するが、LLP遺伝子破壊株では大きな変化を示さない遺伝子をさがす。このような変化の傾向を示す遺伝子についてリアルタイムRT-PCRを行い、次世代シーケンサーで得られた発現量変化に再現性があるかを確認する。発現量に変化のある遺伝子の働きから、LLP遺伝子破壊株が示す表現型を予想し、表現型解析を行う。 ② ヒメツリガネゴケの体制が単純なことは、観察が容易なことが長所となる一方、単純なために表現型が出にくいという短所ともなる。そこで、シロイヌナズナのLLP遺伝子変異株を構築し、LLP機能の解明を目指す。LLP遺伝子のRNAiによるノックダウン株とLLP遺伝子プロモーター-GUS株を完成させ、LLPの発現部位の特定とLLPが関わる生理現象の解析を進める。また、TALEN法によるLLP遺伝子ノックアウト株の構築を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トランスクリプトーム委託解析の終了が年度末だったため支払いが来年度になり、未使用金が生じた。また当初、トランスクリプトームのデータ解析を加えて委託する予定であったが、委託せずに解析することにしたため未使用金が生じた。来年度は、その分も含め、遺伝子発現解析やLLP遺伝子組換え株の構築に必要な分子生物学試薬などの消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)