2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570066
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寺内 一姫 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (70444370)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | シアノバクテリア / 概日時計 |
Research Abstract |
シアノバクテリアにおいてゲノムの全遺伝子の30%以上の転写物レベルが概日リズムを示し、生物時計はゲノム全体にわたってグローバルに遺伝子発現を制御していることがDNAマイクロアレイ解析により示された。また、シアノバクテリアの3つのKai時計タンパク質による生物時計の再構成によって、時間計測という複雑な分子機構がタンパク質に組込まれていることが明らかにされた。しかし、生物時計によって生み出された概日リズムを、細胞がどのようにして遺伝子発現という形で出力しているのかについては不明な点が多い。本研究では、本来生物時計をもたない生物に時計機能を付与する試みを通して、タンパク質による分子時計が遺伝子発現の生体リズムを生み出すための最小ユニットを探索することを目的とする。 この目的を達成するため以下の3つの研究項目を実施する。1.時計機能をもたない異種生物への生物時計タンパク質の移植、2.生物時計出力系の分子生物学的解析、3.上記1,2の成果を統合的に利用し、遺伝子発現が時間的制御された新規細胞の確立。 今年度は上記研究項目の1と2に関して研究実施した。大腸菌(E. coli)および光合成細菌(Rhodobacter capsulatus)において、シアノバクテリア由来のKaiA, KaiB, KaiCタンパク質を発現させる発現ベクターを構築し遺伝子導入した。構築したプラスミドを導入した細菌内で、3つのタンパク質を発現させ、ウエスタンブロット法により確認した。さらにKaiタンパク質が時計として機能していることを、数日間連続培養した細胞内におけるKaiCリン酸化状態の変動を分析することで評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に挙げた3つの項目のうち、現在1および2を実施しており、当初の申請計画に概ね沿って研究が進捗している。 研究項目1においては、大腸菌(E. coli)では、Kaiタンパク質が時計として機能していることを、数日間連続培養した細胞内におけるKaiCリン酸化状態の変動を分析することで評価した。その結果、リン酸化状態が約24時間リズムを示す結果を得ている。また、光合成細菌(Rhodobacter capsulatus)においても、同様の実験を進めている。 一方、2においては、KaiCのDNAとの結合能を再検討した。細胞内ではゲノム全体にわたるグローバルな遺伝子発現が概日リズムを示すが、その時間情報がいかにして最終的に目的遺伝子の転写制御というかたちで出力されるのかについては不明な点が多い。KaiCがDNAと結合すれば、その結果として直接遺伝子発現制御に関わっていると考えられるが、これまでのところDNAとの結合を示す有意な結果は得られていない。これは、3つのタンパク質からなる時計本体からの時間情報が別の因子を介して遺伝子発現へと伝達されるというモデルを支持していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度、項目1を実施するにあたり、当初は様々な条件検討が必要であると想定していた。発現ベクターの検討など様々な分子生物学的なツールの購入が必要と考え実施計画を策定した。しかし、予定よりもすみやかに大腸菌への時計導入実験が進んだために、23年度の研究費を次年度に使用することが可能となった。 今年度は、前年の成果を元に、KaiCが発振子として機能することが確認された組換え体において、生物時計の出力系の確立を目指す。そのために、まず周期的なKaiCのリン酸化状態に応答して制御されることが知られているSasA-RpaA二成分系情報伝達システムを組換え体に導入し駆動させる。一方で、組換え体が周期的に遺伝子発現しタンパク質を発現することを観察するためのレポーター系の開発を行う。組換え細胞において、生物発光レベルを数日間モニターすることで、周期的な遺伝子およびタンパク質発現量変動の指標とし、発現の時間制御が可能であることを評価する。 さらに、光合成細菌での生体リズム再構築系を多様な培養系で試みることで、概日リズム生成への光合成、呼吸系などの生育モードの寄与を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に物品費として使用予定である。細胞培養のための培地や試薬、ガラス器具やプラスティック器具などの消耗品、分子生物学実験のための酵素や試薬、生化学実験のための試薬が主となる。実験の進捗状況により細胞培養のためのインキュベーターが不足する場合は追加購入する予定である。 研究成果発表および資料収集のための旅費、論文投稿費用にも使用予定である。
|
Research Products
(3 results)