2011 Fiscal Year Research-status Report
有羊膜類動物の生殖と代謝機能における環境応答機構の分子生物学的解析
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23570069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朴 民根 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00228694)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有羊膜類動物 / 爬虫類 / 鳥類 / 外温性動物 / 陸上環境因子 / 生殖腺 / 代謝 / 膵臓 |
Research Abstract |
鳥類と哺乳類は外温性である原始爬虫類の中からそれぞれが独立して内温性を獲得した動物群である。このような進化的な背景を重視し、「生殖と代謝に対する環境因子(光と温度)の影響を生殖腺と膵臓を中心としてその生理機能の変化を分子生物学的に解明する」ことを主目的として本研究を計画した。 生殖腺における影響については日本ウズラを用いて展開し、今年度はTex27の分子同定とその発現解析を行った。その結果、Tex27には2種類のmRNA分子種 (shortとlong form) が存在し、3’-UTRの長さのみが異なるものであった。哺乳類と両生類までの塩基配列を解析した結果、long formの3’-UTRにはpolyAシグナル付近に極めて保存性の高い領域が存在し、micro RNAの結合部位が密集していることを明らかにした。一方、光周期による精巣の機能変化における因子の解析を行った。性分化と精巣の機能維持に重要な遺伝子を中心に発現変動が強い遺伝子を検索した結果、AMHとその発現に影響する因子の発現変動が大きかった。 外温性動物での代謝機能への環境因子の影響の解析はニホンヤモリを用いて、膵臓ホルモンであるインスリンとグルカゴン関連因子の機能解析を中心行っている。現在までの結果からニホンヤモリのインスリンタンパク質にはアミノ酸の塩基置換が多いことが分かった。一方、グルカゴン関連遺伝子(グルカゴン、GLP-1、GLP-2)は同じ前駆体(preproglucagon)から産生されるホルモンであるが、鳥類と爬虫類では2種類のmRNA分子種(PGA、PGB)の存在が明らかになっている。両方のcDNA配列の決定とその発現の季節変動を野生のニホンヤモリから解析を行った結果、小腸での発現に性によって異なる発現調節機構がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Tex27の分子同定と発現解析は実績の概要で示したように順調に行われ、国際学術誌に発表した。そして、性分化や精巣の機能に必要な因子の発現に対する光周期の影響を日本ウズラで調べ、今後の研究をAMHというホルモンを中心とした因子に重点をおくことができた。一方膵臓の機能を中心とした代謝機能の研究でも計画通りの研究が進められ、インスリンとグルカゴン関連因子のcDNAの同定と発現解析をニホンヤモリで行った。その結果、インスリンのアミノ酸配列での多数の置換、グルカゴン関連遺伝子の小腸での発現における性による相違点など、今後の研究に重要な知見を得ることができた。なお、これらの研究成果は学術誌や学会でも積極的に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニホンウズラを用いた光環境による精巣機能の解析では、AMHを中心とした研究への修正を必要とする結果が得られた。今年度はAMH発現に必要な因子として性決定時に同定されている因子と共に、減数分裂後の精子を中心としたセリトリ細胞の機能制御に関わる因子に焦点を当てて、今年度の研究を進めていくことになる。一方インスリンでは予想外に多くのアミノ酸配列での置換がニホンヤモリであることが分かった。しかし、野生個体での結果であることから複数の個体での配列を調べる必要がある。なお、グルカゴン関連遺伝子のmRNAの発現でみられた性による小腸での発現の違いをより詳細に調べることとする。一方、インスリンとグルカゴン関連遺伝子の受容体、そしてGLP-1とGLP-2の分解酵素(DPP-4)の分子同定を開始し、ニホンヤモリにおけるこれらホルモンの情報伝達系の全体像を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費の殆どは実験に用いられる試薬と消耗品の購入に充てられる予定である。なお、研究集会等への出席と動物採集のための旅費、そして論文作成や情報収集などに必要な経費も含まれることになる。
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Research Products
(8 results)