2011 Fiscal Year Research-status Report
メダカにおける人為的性転換反応の多様性と逆説的性転換
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23570073
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柴田 直樹 信州大学, 理学部, 准教授 (20252059)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 性転換 / メダカ / 逆説的性転換 / 性ステロイド投与 |
Research Abstract |
本研究では、メダカにおける逆説的性転換と、胚への性ステロイド投与による転換反応の系統差を明らかにすることを目的としている。 23年度には、Hd-rR系統にメチルテストステロン(MT)を投与した際に見られる逆説的性転換の過程を改めて詳細に解析した。その結果この系統では0.001ug/mlのMTを投与された個体は孵化直後に生殖細胞の分裂活性が著しく低下するという一様な反応を示すものの、その後の性分化は遺伝的性によらない様相を呈する、すなわちXX個体XY個体いずれでも、精巣を形成する個体と卵巣を形成することが現れることが明らかとなった。ただしXY個体にMTを投与した場合には、卵巣形成、すなわち逆説的性転換が生じる割合が高くなった。また同様のMT投与をHNI系統に行った場合、全てのXX個体に精巣が形成され、その際、孵化日以降の生殖巣でDmrt1の異所的な発現が見られた。 Hd-rR系統で得られた結果が当初の想定と異なっていたため、系統間交配個体に関する実験は延期し、他系統での解析を優先しHO4C系統での解析を開始した。その結果この系統ではMT投与個体では雌から雄への性転換が誘導され、この際、HNI系統と同様にDmrt1の異所的な発現が見られた。このことは雌から雄への性転換にはMTにより何らかの経路でDmr1の発現が誘導されることにより起こることを示唆する。一方、エストロゲン(E2)投与では、孵化直後には全個体に卵母細胞が形成されたものの、遺伝的雄個体では、その後そのまま卵巣を発達させた個体と卵母細胞が失われ精巣を発達させた個体が見いだされた。このことは、性転換は性分化方向の変更とともに、性分化後の生殖巣発達過程での性の維持機構も関わることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hd-rR系統での結果が、MT投与ではXY個体全個体で逆説的性転換が起こるという当初の想定と異なり様々な反応が見られたため、HNI系統と系統間で交配した胚を用いた性転換実験でも、結果にばらつきが見られることが予想された。この場合、最終的な性が不確定なまま性ステロイド投与後の過程を解析することになってしまうため、例えばある遺伝子の発現パターンに着目しても個体ごとに異なる結果が得られる可能性が高く結果の解釈が困難となる。よって当面、この解析の開始しを延期した。ただし、どの程度結果がばらつくかということについての予備的な解析は開始している。 一方、系統間交配を実施しなかった分を、リソースを他系統であるHO4C系統における性転換反応の解析に投入し前倒しで解析を行うことができた。ただし、このHO4C系統の結果が、これまで見られなかった興味深いパターンを示したため、今後さらなる解析が必用と考えられる。 総合すると、一部計画変更はあるものの、研究目的に対しては概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
性転換の系統差における実態を明らかにするために、他の系統についての解析を進める。まずはHO5系統およびHB11A系統について、MT、E2それぞれを投与した場合の反応について、性転換の有無、孵化前後での生殖細胞の動態、性分化関連遺伝子、特に雄分化に関わるとされるDmrt1、Sox9a2また雌分化に関わるとされるFoxl2に発現に着目し解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は当初予定していたパート賃金の一部を運営費交付金で雇用したため若干の未使用額が生じた。24年度は予定通り研究費の大半をメダカ飼育に関わるパート賃金とし、23年度未使用額も含めて残額を通常消耗品の購入に使用する。
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