2012 Fiscal Year Research-status Report
メダカにおける人為的性転換反応の多様性と逆説的性転換
Project/Area Number |
23570073
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柴田 直樹 信州大学, 理学部, 准教授 (20252059)
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Keywords | 性転換 / メダカ / 逆説的性転換 / 性ステロイド投与 |
Research Abstract |
本研究では、メダカにおける逆説的性転換と、胚への性ステロイド投与による性転換反応の系統差を明らかにすることを目的としている。24年度には新たな系統として、HO5系統およびHN11A系統でどのような性転換が見られるかを解析した。 HO5系統では胚にE2を0.1~0.6ug/mlの濃度で投与した場合に遺伝的性にかかわらず卵巣形成が誘導され、雄から雌への性転換が起こることが明かとなった。しかしこの際、初期性分化時の生殖幹細胞の動態を調べると正常な卵巣分化時とは異なり、精巣分化と卵巣分化の中間形となっていた。一方MT投与では0.00005~0.001ug/mlの範囲ではXX個体にも精巣が形成された。すなわち、胚への性ステロイド投与で両方向への性転換を起こせる系統が見いだされた。さらに、より高い濃度のMTを投与した場合には、一部のXY個体に卵巣が形成されるという逆説的性転換も見られた。これらのことから、逆説的性転換が起こるのは特定の系統の性質ではなくMTへの感受性に系統差があり、より感受性が高い系統を逆説的性転換系統としてきた可能性が示唆された。 HB11A系統ではE2投与個体については0.2ug/ml~0.6ug/mlの範囲で雄から雌への性転換率が100%となった。昨年度の結果も踏まえると、E2の効果は系統間でほぼ一定でありHNI系統のみが特殊な系統と見なせる。一方MT投与では0.001ug/mlでは雌から雄への性転換が見られたが、このとき初期性分化時には遺伝的性にかかわらず生殖幹細胞数が異常に減少し、また一時的に卵母細胞が出現していた。このことは正常な精巣形成とはまったく異なる過程を経て精巣が形成されることを意味する。またより高濃度のMTを投与した場合、孵化後30日の時点で遺伝的な性に関わらず萎縮した生殖巣を持つ個体や、精巣様構造の中に卵母細胞のみを持つ個体が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たな2系統について、性転換反応の概要を明らかにでき、特に当初目標としていた両方向への性転換を解析できる系統が見いだすことができた。一方、これらの系統でも生殖幹細胞の動態からは、性転換での生殖巣形成は正常初期性分化とは異なる経過をたどること、MT濃度を変化させることで予想されなかった形態を示すことも明かとなった。この想定外の反応に対する解析を継続したため、当初予定していた分子レベルでの解析は、着手できたものの予備的な結果を得る段階までしか到達できず、この点で若干遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に解析した2系統が、いずれも両方向への性転換が可能であること、および高濃度のMT投与では異常な生殖巣形成過程を示すことが明らかとなったので、25年度はこれらの系統について分子レベルでの解析を優先的に行う。具体的には性分化時およびその直後から性分化関連遺伝子の発現動態、特に雄分化に関わるとされるDmrt1、Sox9a2また雌分化に関わるとされるFoxl2に発現を解析する。 一方、予備的ながら高濃度MT投与個体も最終的には雄または雌へと成熟することが示されているので、本来の性分化とはまったく異なる時期にどのように生殖巣形成(再構築)が起こるのかを、形態レベルで解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は当初予定していた分子レベルの解析が想定どおり進まなかったため、若干の未使用額が生じた。25年度は予定通り研究費の大半をメダカ飼育に関わるパート賃金とし、24年度未使用額も含めて残額を通常消耗品の購入に使用する。
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