2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570078
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 栄 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20226989)
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Keywords | 性差 / 体色 / 遺伝子発現 / 羽 / 鳥類 / メラノコルチンシステム / メラニン産生 |
Research Abstract |
本研究は,ニワトリの雄鞍部に生じる中雛型羽と成鶏雄型羽,卵巣由来の雌性ホルモン(E2)処理することで生じる成鶏雌型羽の詳細な形態的特徴付けを行うとともに,これらの羽形成過程における遺伝子発現の違いを網羅的に解析することで,羽という皮膚付属器の加齢変化と性差を作り出す分子機構を明らかにすることを目的とする。前年度(初年度)は,鞍部に生じる中雛型羽と成鶏雄型羽,及びE2処理することで雄に生じる成鶏雌型羽が形成される羽包における遺伝子発現の違いをDNAアレイにより網羅的に解析した。その結果,羽の性差形成に関与する可能性のある候補遺伝子を複数同定した。本年度は以下を実施した。 1.成鶏雌の皮下に雄性ホルモン(DHT)を投与し,羽形成に及ぼす影響を調べた。その結果,DHTは羽の雌雄差形成に関与しないことが分かった。成鶏雄の皮下にE2を投与した結果(Oribe et al., 2012)等と併せると,羽装色パターンは雄型がデフォルトであり,雌型は雌性ホルモンの働きによって形成される可能性が強く示唆された。 本研究成果は第2回サイエンス・インカレで発表され,奨励表彰を受賞した。 2.DNAアレイ解析で見つかった性差形成に関与する可能性のある候補遺伝子について,その発現の詳細をRT-PCR法により解析した。また,DNA配列から推測される翻訳産物に対する抗体を作製し,翻訳産物の性格付けを行った。その結果,雌雄の形態的違い(小羽枝の有無)に完全に相関した遺伝子(Blsk)が同定された。また,E2の働きを仲介する可能性のある分泌性の新規糖鎖付加ペプチド(MFF)が同定された。 3.成鶏雄鞍部の羽の小羽枝構造欠損の仕組みを明らかにするため,羽構造が形成される羽包の形態観察を行った。その結果,雄の羽形成では,雌に匹敵する数の小羽枝細胞が一度出現し,その後消失することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実施計画では,①鞍部に生じる羽の雌雄差,すなわち小羽枝の有無が細胞増殖によるのか,アポトーシスによるのかを明らかにするとともに,②DNAアレイ解析で,鞍部に生じる中雛型羽と成鶏雄型羽,及びE2処理することで雄に生じる成鶏雌型羽のそれぞれの羽包で発現量が大きく異なる遺伝子についてリアルタイムPCRでそれを確認することを目的としていた。 ①に関しては,研究実績の概要にも記したように組織切片標本の観察から,アポトーシスの可能性が示唆された。②に関しては,リアルタイムPCRは行えなかったものの,研究実績の概要にも記したように,羽の雌雄差形成に深く関与する可能性のある遺伝子,BlskとMFFを詳細なRT-PCR解析から同定した。このようなことから,本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である平成25年度は,羽の雌雄差形成に深く関与する可能性のある遺伝子,BlskとMFFをより詳細に性格付けすることで,羽という皮膚付属器性差を作り出す分子機構を明らかにする。具体的には,in situ hybridizationや免疫組織化学による当該遺伝子発現細胞の同定,in vivoおよびin vitroにおけるE2によるこれら遺伝子の発現制御の解析,抗体による中和阻害などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究計画に従って,試薬・消耗品を主として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)