2011 Fiscal Year Research-status Report
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23570079
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤江 誠 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20274110)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 耐病性 / 青枯病菌 / CWDE / エンドグルカナーゼ / 導管 / GFP標識 / 側根 |
Research Abstract |
ナス科作物などに感染する青枯病菌(Ralstonia solanacearum)は、根等から植物体内に侵入し導管を伝わって全身に蔓延し、植物を枯死させる。感染プロセスの研究過程において、(1)青枯病菌がトマトの芽生えに側根を誘導する現象、(2)青枯病菌耐性の品種においては、菌の導管内での移動が抑制される現象を見いだしており、本研究においてはこれらの現象の解析を目標としている。23年度においては、主に(2)の項目について研究を行った。 青枯病菌が植物に侵入感染する過程においては、植物の細胞壁を分解する能力が重要である。青枯病菌ゲノムにコードされる細胞壁分解酵素(CWDE)のうち、セルロースを分解するエンドグルカナーゼに着目して研究を行った。エンドグルカナーゼ破壊株をGFPで安定に標識した株を作製し、トマト芽生えに感染させ、蛍光顕微鏡で菌の感染・増殖の進行をリアルタイムでモニタリングする系を完成させた。菌の植物体内における動態のリアルタイム解析を高感度CCDカメラにより行った結果、主根と側根の境界、および主根と茎の境界において、菌の移動が遅延・停止する現象を確認した。この現象には、CWDEが関与していると考えられた。破壊株においては、(1)virulence、(2)植物体内での移動速度、(3)増殖速度、(4)菌体外多糖の分泌の低下という、4つの指標の低下が確認された。破壊株に野生型遺伝子を相補した株では、指標の低下が抑圧された。また、青枯病菌をトマトの芽生えに感染させると、根から増殖した菌体が漏れだす現象が見られるが、エンドグルカナーゼ破壊株を感染させた場合では、菌体が漏れだす頻度が明らかに低下していた。 これらの23年度の研究成果により、青枯病菌の持つCWDEのうちエンドグルカナーゼは、宿主植物体内での菌の移動・増殖において重要な役割を果たすことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)青枯病菌の感染による側根誘導現象(茎からも発根する)に関与する青枯病菌側のファクターの解析。 この研究項目については、今後さらに研究を加速する必要がある。 当初計画においては、青枯病菌の持つtypeIII effecterを網羅的に取得し、その発現を解析する予定であったが、23年度においては、研究推進の優先度を考慮して(2)の項目に重点をおいて研究を遂行した。24年度においては新たに研究チームに加わった学生と共に、計画した網羅的な解析を詳細に実施する予定である。(2)青枯病菌に耐性のトマト品種において、菌が導管内を移動する能力が抑制される機構の解明 この項目については、おおむね予定通り研究が進行している。 野生株及び、egl(エンドグルカナーゼ)破壊株を蛍光標識し、植物体内への青枯病菌の侵入と植物体内での移動の様式をリアルタイムモニタリングで比較検討した結果、エンドグルカナーゼが菌の移動・増殖において重要な役割を果たす事を観察した。また、egl破壊株に野生型のEGL遺伝子を導入して相補すると、破壊による移動・増殖の抑制効果が解除されることから、青枯病菌が持つ多糖分解酵素の中で、eglが植物体内の移動に重要であることを確認できた。さらに、主根と側根の接合部付近において、菌体の進行が抑制されることから、何らかの物理的な障壁の存在を推察した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)effecterの網羅的解析 23年度に実施予定であった、青枯病菌の3型effecterの発現プロフィールの定量PCR法による網羅的解析を実施する。青枯病菌のegl破壊株と野生株の感染の各ステージで、植物体からトータルRNAを取得し、側根形成への関与が予測されるeffecterについて解析を進める。(2)側根関連effecter-GFP融合タンパク質の発現 側根形成との因果関係が認められたeffecter遺伝子については、effecterタンパク質が青枯病菌から植物細胞に注入される過程をリアルタイムで追跡する。effecterとGFPの融合タンパク質を発現するコンストラクトを作製し、青枯病菌株に形質転換し細胞間の移動を顕微鏡観察する。(3)トマトの根の三次元構造の解析 23年度の研究で側根と主根の接続部や主根と茎の接続部等において、青枯病菌の進行を抑制する構造の存在が示唆された。青枯病菌の移動をGFPでリアルタイムモニタリングしながら、光学顕微鏡を用いて導管構造の3次元解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)現在までの達成度の欄で述べたように、研究推進の優先度を考慮してeffecterの網羅的な取得・発現解析を23年度から24年度以降に変更した。このために、見込んでいた消耗品代として、303,557円を24年度に繰り越している。(2)24年度には繰り越し分と合算して、物品費として、953,557円(顕微鏡付属品200,000円、分子生物学用試薬等消耗品753,557円)、成果発表・情報収集のための旅費として150,000円を計上している。合計の支出予定は、1,103,557円である。
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Research Products
(6 results)