2011 Fiscal Year Research-status Report
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23570080
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
日高 道雄 琉球大学, 理学部, 教授 (00128498)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | サンゴ / 生活史 / 再生 / 老化 / テロメア / テロメラーゼ / 幹細胞 / 群体 |
Research Abstract |
本研究では、イシサンゴの高い再生能力や長寿命の細胞学的基盤を解明するために、テロメア長に基づくサンゴの年齢査定の方法を開発し、無性生殖や再生時のサンゴの若返りの可能性や幹細胞の動態を調べることを目的とした。 テロメアプローブを用いたサザンハイブリダイゼーションにより特定染色体のテロメア長を測定する方法(STELA法)をアザミサンゴに適用した。異なる発生段階(精子,プラヌラ幼生,ポリプ)でテロメア長に有意差が見られず、初期発生段階でテロメア長を維持するテロメラーゼが強く発現していることが示唆された(論文投稿中)。OIST佐藤ユニットの協力を得て、コユビミドリイシのゲノム情報を利用してテロメア隣接領域を探索し、STELA用プライマーを4個設計した。現在4個のテロメアについてテロメア長を推定できるようになった。長軸ポリプと側生ポリプ、群体周辺域と中心部のポリプ間でテロメア長を比較することが可能となった。単体サンゴのトゲクサビライシでは、STELA産物の長さとサンゴの重量(年齢の指標とした)に負の相関関係が見られた(投稿論文作成中)。ある種のサンゴでは、テロメア長が年齢とともに短縮し、年齢推定に利用できる可能性がある。コユビミドリイシおよびウスエダミドリイシの異なる発生段階(嚢胚,プラヌラ幼生,成群体)のトランスクリプトーム解析をJSPSポスドク研究員(Reyes-Bermudez)とOISTのMikheyevユニットの協力を得て実施した。今後幹細胞の維持や分化に関わる遺伝子解析の道が開かれると考えられる。ハマサンゴの成長異常部(growth anomaly)では、アポトーシス細胞の頻度が低下し,細胞増殖が活性化していることが分かった(投稿論文作成中)。今後テロメラーゼ活性を測定し、腫瘍様性質をさらに確かめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STELA法を群体サンゴに適用することに成功した。アザミサンゴではテロメア隣接領域(subtelomeric region)の塩基配列を決定し、4つの特定染色体のテロメア長を測定することに成功した。ゲノム情報のあるコユビミドリイシについては、OIST佐藤ユニットの協力を得て、テロメア隣接領域と思われる配列をゲノムより探索し、STELA用プライマーを4個設計し、STELA産物を増幅できることを確認した。 コユビミドリイシおよびウスエダミドリイシの発生段階(嚢胚,プラヌラ幼生,成群体)のトランスクリプトーム解析をJSPSポスドク研究員(Reyes-Bermudez)とOISTのMikheyevユニットの協力を得て実施した。今後幹細胞の維持や分化に関わる遺伝子解析の道が開かれると考えられる。 テロメラーゼ活性については、これまでTRAP法の変法であるStretch PCR法を用いた活性検出を行い、アザミサンゴ体細胞組織にテロメラーゼ活性のあることを見いだしてきた。現在さらに定量性を改良した方法で詳細な測定ができる準備をしており、今後数か月で新しい方法での測定を開始する。 現在数編の論文を作成中であり、次年度中に発表できると考えており、ほぼ予定通りの進捗状況と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
サザンハイブリダイゼーションによるSTELA産物検出の際に、サブテロメア領域のプローブを使用すると感度が低下するため,今回テロメアプローブを使った(STELA産物1分子にサブテロメアプローブは1つしか結合しないが,テロメアプローブの場合は複数のプローブが結合することができる)。今後サブテロメアプローブを使用して同じ結果になることを確かめる。 テロメア長測定には、抽出したDNAがインタクトであるという証明が必要である。今後は,サンプルごとにDNAの質を保証する検定を行う。 テロメア長測定の誤差が、テロメア長の変化よりも大きいと,テロメア短縮を検出できない可能性がある。検出可能なテロメア長の変化とSTELA法の感度を比較する検証を行う。 今回,初期発生の過程でテロメア長が維持されたことから、テロメラーゼ活性が高いことが予想される。テロメラーゼ活性を様々な発生段階のサンゴで測定することによりこの可能性を検証する。テロメラーゼ活性を正確に測定するためには,テロメラーゼが付加したユニット数で定量化することが望ましい。そのために(1)real time PCRを行い、形成された2本鎖DNAの総量をSYBR法で検出する。(2)プライマーを蛍光標識(energy transfer primers, AmplifluorTM primers)し、画像解析またはシークエンサーを用いてサイズごとの分子数を測定し、付加されたユニット数を求める、の2つの方法を試みる。 「テロメラーゼ活性が高いとテロメア長が維持される一方ガン化のリスクが大きい」、「テロメラーゼ活性が低いと、テロメア長は維持されないが、ガン化のリスクは小さい(またはテロメア長が短縮し、細胞老化が進む)」という生活史戦略の観点から異なるサンゴ種について、テロメラーゼ遺伝子、がん抑制遺伝子の発現解析に着目して研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究用の備品はすでに整備されているので、主に分子生物学の試薬類、キット類の購入に充てたい。テロメラーゼ活性の測定に、蛍光標識(energy transfer primers, AmplifluorTM primers)したプライマーを用いてreal time PCRを行い、テロメラーゼ活性を定量化する方法(TRAPEZE RT)を試みる。STELA産物をサザンハイブリダイゼーションで定量化するために、AlkPhos Direct Labelling and Detection Systemを購入することが必要である。テロメラーゼや幹細胞マーカー、ガン抑制遺伝子などの発現をreal time PCRで調べるための試薬類を購入する。サンゴ幼生における幹細胞マーカーの発現をin situ hybridizationで調べるための消耗品類を購入する。第12回国際サンゴ礁シンポジウムで成果を発表するための旅費も計上した。サンゴの採集、データ解析のために大学院生を臨時雇用するための謝金も計上した。
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