2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570085
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
荻野 由紀子 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (00404343)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 細胞・組織 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究は、1)アンドロゲン受容体(AR)遺伝子機能阻害により生じるメダカ個体レベルの表現型を分子レベルからアプローチする。2)アンドロゲン応答細胞の分化系譜解析により、"Androgenによる生命機能に必須の発生現象"について、分子生物学的基盤を明らかにするものである。AR の機能阻害により、尾部側血島PLMからの血液血管内皮前駆細胞の分化にARシグナリングが貢献していると予想し、メダカ初期胚アンドロゲン応答細胞の造血・血管発生における分化系譜解析を行った。具体的には、アンドロゲン応答配列により、アンドロゲン受容細胞をmCherry 陽性細胞として可視化するレポーター遺伝子を血管内皮細胞、赤血球をGFP陽性細胞として検出できるFlk-GFP, GATA1-GFPトランスジェニックメダカに導入し、アンドロゲン応答細胞の分化系譜を解析した。その結果、卵黄静脈血管内皮細胞および赤血球において、アンドロゲン応答細胞を検出した。哺乳類において、血管内皮細胞やHSCにARが発現しているとの知見があるが、その役割の詳細はわかっていない。本知見は、ARシグナリングが細胞自律的に中胚葉細胞から赤血球・血管内皮細胞に分化している可能性を示す先駆的知見である。 さらに、AR標的遺伝子の網羅的解析として、ARβMO導入胚とControl MO導入胚間のマイクロアレイ解析を行った。ARβMO導入胚では血液血管内皮前駆細胞で発現するFli, Tal1、および赤血球分化マーカーGATA1、α― globinの発現低下、Bmp4、Bmp7、Dkk1の発現上昇、Wnt5aの発現低下が認められ、ARβMO導入胚では、Bmpシグナリングが活性化、Wntシグナルが抑制されている可能性が考えられた。Androgenはこうした増殖因子群の発現制御を介して初期胚期における造血・血管発生を制御している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に行った、マイクロアレイ解析により、ARの標的候補遺伝子群が明らかとなり、具体的な候補因子群について、ChIP assay, mRNA導入などによる機能解析へ進むことが可能となった。さらに、AR遺伝子の発現領域と、候補となったAR標的遺伝子の発現領域を比較解析することで、 ARにより直接的制御をうけているのか、パラクラインなmediatorを介して間接的に制御されているのか、ARとAR標的候補遺伝子の関連性をより詳細に解析することができるようになった。このように、アンドロゲンによる初期胚血液・血管内皮分化制御の分子機構を解析する上で必要な遺伝子情報が集積した。さらに、メダカTILLING ライブラリーから AR遺伝子変異体スクリーニングが完了し、本年中に既に解析したAR morpholino oligo (MO)注入によるAR機能阻害胚と表現型の比較・確認を行うことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
アンドロゲン標的遺伝子の選定、機能解析によりARシグナリングによる血球血管発生の遺伝子カスケードを明らかにする。1)アンドロゲン標的候補遺伝子について、ARおよび血液血管内皮分化マーカーとの発現領域の比較解析をう。2)標的候補遺伝子mRNAをARβMOとともにメダカ受精卵に注入し、遺伝子発現(Lmo2, GATA1)、表現型の回復がみられるか解析する。3)アンドロゲン標的候補遺伝子の発現制御領域におけるアンドロゲン応答配列AREを検索、Promoterのアンドロゲン応答性をLuc assayにて解析し、標的遺伝子を同定する。さらに、HSP-WT AR(野生型AR遺伝子をGFP との融合遺伝子として発現する)を用いたChIP assayによりアンドロゲン標的遺伝子を同定する。4)AR遺伝子欠損マウスを用いた造血における表現型解析として、平成23年度末梢血を各血球細胞表面マーカーを用いてソートし、血球分化に偏りがみられるか解析した。少なくとも2ヶ月齢のマウスでは血液細胞の分化に顕著な異常は認められなかった。しかし、ヒトにおいて男性更年期以降のアンドロゲン産生低下は、貧血や心血管系疾患の発症に関連性があることが指摘されていることから、老齢期のマウスにおける造血・血管発生、血液幹細胞HSC維持機構に関与する可能性が考えられたので、さらに老齢期のAR遺伝子欠損マウスについて、解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、主に、初年度のマイクロアレイ解析により候補となったアンドロゲン標的候補遺伝子について機能解析を行う。よって、主にin vitro mRNA合成、受精卵へのマイクロインジェクション、in situ hybridization、競合PCR、ChIP assayに使用する試薬、消耗品を必要とする。また、アンドロゲン応答細胞の血液血管内皮細胞への分化プロセスについて、FACSを用いた詳細な解析に必要な抗体、試薬等を購入する。FACS解析については、研究協力者との連携が必須であり、出張経費を必要とする。また、medaka Tilling mutantのバッククロス、表現型解析に必要な試薬、消耗品、飼育器具を必要とする。
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Research Products
(2 results)