2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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Keywords | 昆虫 / 嗅覚 / 投射ニューロン / 触角葉 / ナビゲーション / キノコ体 / 性フェロモン / トポグラフィー |
Research Abstract |
夜行性の動物は、視覚を補うためにしばしば匂いによるコミュニケーションを発達させている。本研究では、長い嗅感覚器(触角)を持ち、正確な匂い源定位能力をもつワモンゴキブリをモデル動物として、匂いの位置情報を符号化するニューロンの形態・生理学的基盤を明らかにすることを目的とする。 平成24年度は予定通り、匂い受容野形成の形態学的基盤の研究に注力した。まず、性フェロモン処理に特化した大糸球体から出力する投射ニューロンの細胞内記録・染色を継続して行い、サンプルサイズを従来よりも3割程度増やすことに成功した。これにより、投射ニューロンが11タイプからなることをほぼ確定させた。次に、大糸球体に入力する嗅受容細胞の軸索の詳細な組織化を明らかにするための簡便かつ有効な方法を開発した。それは触角の切断と数日後の色素注入により、退化した嗅細胞の軸索を可視化するという方法で、それまで染色の困難であった触角末梢に由来する嗅受容細胞の投射領域・体積を定量的に計測することが可能となった。また、総研大との共同研究により、嗅受容細胞の軸索をビオチン・ローダミン、投射ニューロンをルシファーイエローで標識し、これを免疫電顕法により観察する実験も進行中である。これらのデータは現在執筆中の論文に反映させる予定である。なお、触角の局所匂い刺激に応じる触角葉内の局所介在ニューロンの同定にはまだ至っておらず、継続的な研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は研究二年目に当たる。研究の主要な目的は論文投稿を想定し、フェロモン受容糸球体から出力する投射ニューロンのサンプルサイズを増やし、投射ニューロンの機能的なタイプがいくつあるのかを確定させることにあった。我々は粘り強い実験の結果、各ニューロンタイプのサンプルサイズを3割~4割程度増やすことに成功した。並行して行っている嗅覚求心繊維と投射ニューロンのシナプス様式についての研究も総研大の協力を得て、着実に進んでいる。最近の数ヶ月は過去6年の研究の集大成となる論文の投稿準備に注力しているため、触角の局所刺激に応じる触角葉内在性介在ニューロンの同定は進んでいない。関連研究については共著の原著論文を1本、著書(分担執筆)を1本パブリッシュした。以上を総合的に判断し、達成度は80%としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究の最終年度にあたるため、研究の「選択と集中」をシビアに行うこととしたい。まず、投射ニューロンのスパイク活動と触角運動の相関について調べることを当初の計画に盛り込んでいたが、平成24年度の予備実験から当ニューロンと触角運動の間には明瞭な相関関係が認められないことが判明した。そこで、この研究計画の実施については留保する。一方で、触角全域に受容野を持つ投射ニューロンと触角局所に受容野を持つ投射ニューロンの求心繊維とのシナプス形成様式については試料の包埋までは成功しているため、引き続き超薄切片を作成することで、両者のシナプス形成様式に違いがあるのかどうかについて調べる。この実験については卓越した免疫電顕の技術を持つ総研大・神経行動学研究室の松下先生との共同研究により遂行する。また、電気生理学的手法により、触角の局所的な匂い刺激に受容野を持つ触角葉内の局所介在ニューロンの同定を進める。データの論文化は平成24年度から進行中であるが、研究最終年度であることを考慮し、平成25年度中のパブリッシュを目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度未使用額については、すでに雇用契約を結んでいる非常勤研究員への謝金支払いやマイクロマニピュレータなどの物品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Participation of NO signaling in formation of long-term memory in salivary conditioning of the cockroach.2013
Author(s)
Matsumoto, C.S., Kuramochi, T., Matsumoto, Y., Watanabe, H., Nishino, H., Mizunami, M.
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Journal Title
Neuroscience Letters
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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