2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570092
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田守 正樹 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (50236767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 章 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所バイオICT研究室, 主任研究員 (80359075)
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Keywords | 生理学 / 動物 |
Research Abstract |
棘皮動物はキャッチ結合組織と呼ばれるコラーゲンを主成分とする刺激によって硬さが変わる結合組織を持つ。本研究は、この棘皮動物に独特の硬さ変化の機構をタンパク質分子レベルで解明することを目指している。材料としては、これまでに引き続きキャッチ結合組織のひとつであるナマコの体壁真皮を用いた。これまでの研究で、強い機械的刺激に反応して著しく軟化するシカクナマコの真皮から軟化因子を高純度で精製することができた。軟化因子をSDS-PAGEで分析すると、クマシーブルーで染まる単一のバンドが検出されたので、軟化因子はタンパク質であると予想されていた。そこでN末端のアミノ酸配列を読む実験をおこないN末端の17残基の配列を決定した。BLASTで相同性解析をおこなった結果、この配列と高い相同性を持つ配列は見つからなかった。そこで我々は、この軟化因子を新発見のものだと考え、そのはたらきからソフニン(softenin)名付けた。ソフニンを加えることによって、細胞を破壊した真皮のモデルの「硬さ」が変化するかどうかをこれまでと同様に動的力学試験で調べた。真皮のモデルは従来、シカクナマコの真皮を界面活性剤Triton X-100で処理することによって作製していたが、今年度はニセクロナマコの真皮を材料にして硬さの異なる2種類のモデルを作製することに成功した。新たに開発した軟らかい真皮のモデルを使った実験からソフニンとニセクロナマコ由来の硬化因子テンシリン(tensilin)が拮抗的にはたらくことを示した。以前からニセクロナマコから単離したコラーゲン原繊維にテンシリンを加えると凝集がおこることが知られていたが、今年度の研究によって、凝集したコラーゲン原繊維にソフニンを加えると原繊維が分散することがわかった。以上の結果は学術誌に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学術誌に研究成果を公表できる段階まで研究は進んだが、この課題での当面の目標である硬化因子あるいは軟化因子の全一次配列の解読は、いまだ達成されていない。よって研究は、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
N末端の配列が判明したソフニンについて、トリプシン断片などの他の部分配列の情報を得る。ソフニンのアミノ酸配列がある程度わかれば、その配列をもとにプライマーを設計しRT-PCRをおこなう。ソフニンについては、タンパク質の全一次配列の解読を目指す。配列の解読をおこなうのと同時に、シカクナマコから精製したソフニンに糖鎖が結合しているか、もし結合しているなら、それはどのような糖鎖であるかについても調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ソフニンについては、タンパク質の全一次配列を解読し、この課題での研究を終了させる予定であったが、研究がやや遅れたために未使用額が生じた。 未使用額は主にソフニンの全一次配列を解読するために使用する。
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