2011 Fiscal Year Research-status Report
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23570093
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
最上 善広 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30166318)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アロメトリー / 単細胞生物 / 基礎代謝速度 / 酸素消費 / 遊泳速度 / 3/4法則 |
Research Abstract |
サイズの異なる生物種を比較すると、その個体サイズと生理現象の関係はアロメトリーで表現される。最も基本的な指標として基礎代謝速度があり、哺乳類だけにとどまらず多くの生物種を含んで「基礎代謝速度は体重の3/4乗に比例する(3/4乗法則)」ことが知られている。アロメトリーの概念は当初、恒温動物における多くの測定に基づいて提唱され、他の生物での測定が進むにつれ、その適用範囲が拡大されてきた。現在では、アロメトリーの法則は多細胞生物の仕切りを超え、単細胞生物にも当てはまるというのが通説となっている。 フラクタル理論の応用をはじめとして,アロメトリーに関する理論の先鋭化に比べ実験事実の集積は遥かに遅れており、実験的根拠となっているデータは数十年間改訂されていない。さらに、単細胞を扱った実験研究は少なく、集約的な例として良く引用されるデータは半世紀近くもの批判の対象とはなっていない。しかも文献に記載されている測定には多細胞動物の卵細胞での測定が含まれており、厳密な意味での単細胞生物のデータとは言えない。また、アロメトリー理論は本来、動物の基礎代謝量に対して当てはめられるものであるが、単細胞生物においてはそのことに充分な注意が払われてこなかった。粘性効果が支配的となる単細胞生物の運動では、運動によって消費されるエネルギーが代謝量の大きな割合を占めるが、これまでの測定では、運動依存的な代謝を分離することがなされてこなかった。 本研究では、先行研究において開発された運動活性と酸素消費を同時測定できる新しい方法を応用し、単細胞生物繊毛虫での「基礎代謝」を特定する。それをもとに、単細胞生物での、代謝速度とサイズとの関係を明らかにし、繊毛虫におけるアロメトリー法則、特に3/4乗法則の妥当性を検討する。さらに、同様の測定を他の原生生物にも応用し,単細胞生物でのアロメトリー理論の普遍性の検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生物試料を含む小容量のチャンバーでの溶存酸素濃度を測定すると同時に、チャンバー内部での遊泳行動を記録するために,酸素センサーを装備したオプティカル・スライス法記録のできる装置の作成を既存の装置をもとに検討した。 酸素消費の測定のためには従来の電気化学式センサーに代えて蛍光式酸素センサーを用いることとした。遊泳行動を妨げるような撹拌をせずに酸素濃度を測定するためには、試料チャンバーの体積をなるべく小さくする必要がある。その際、電気化学式センサーでは、測定自体によって内部の酸素濃度が変化してしまう。一方、蛍光式酸素センサーでは測定時に酸素を消費しないことから、小容量での計測が可能となる。従来の装置では、700μl程度のチャンバー容量を実現していたが,装置の操作性が悪く,作業が繁雑になりがちであった。まずは,既存のセンサー装置の仕様を改めてチェックし,次の装置開発へ反映させる作業を行った。その結果、測定の精度を高めるためにはチャンバー容量を1/4以下にする必要があり,そのためにはセンサーチップを工夫する必要があることがわかった。複数のメーカーのセンサーの性能と使い勝手を比較した結果、PreSens社製のFibox3-MOが最適と判断された。このシステムでは,蛍光センサーチップを容器内に封入したままで非破壊的に酸素濃度の計測が可能となる。このセンサーシステムを中核として、オプティカル・スライス法が可能なチャンバーを設計した。 計測装置の試作にあたり,試料チャンバーの素材に問題点があることがわかった。アクリル素材では,工作がたやすいものの,(特定できない理由によって)酸素濃度の測定値が大きく変動してしまう。ガラス素材では,濃度の測定は安定するものの,工作性が悪く,オプティカル・スライス法の利点を生かし切れない。これらの問題点をクリアするための設計変更が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中核となる,小容量のチャンバーの内部での溶存酸素濃度が測定されると同時に、チャンバー内部での遊泳行動をオプティカル・スライス法で測定可能な装置の作成を進める。そのためには,素材の不適合の問題をクリアする必要がある。現時点で,両方の素材に対する微細加工が可能な業者を選定中である。ガラスとアクリルの両方の利点を生かした,ハイブリッド・チャンバーを作成し,その性能試験を行う。既存の機器を用いての計測経験のあるゾウリムシを試験用試料として実運用を行い、不具合の洗い出し等を行いつつ、測定手順の確立、装置のファインチューニングを行う。 あわせて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞サイズ計測方法の確立を目指す。共焦点レーザー顕微鏡によって得られる光学切片をもとに、細胞体の3次元再構築を行うことで、より具体的な体積の計測を行うために,既製のアプリケーションを応用する。 手法の確立と並行してアロメトリー計測に使用できる単細胞生物試料を収集し、その維持管理を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蛍光センサーチップを容器内に封入したままで非浸襲的に酸素濃度が測定されると同時に、チャンバー内部での遊泳行動をオプティカル・スライス法で測定可能な装置の制作に使用する。あわせて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞サイズ計測方法の確立を目指し,光学切片をもとに細胞体の3次元再構築からより具体的な体積の計測を行うためのアプリケーションを購入しカスタマイズするために使用する。アロメトリー計測に使用できる単細胞生物試料を収集し、その維持管理を行うために使用する。試料の維持管理や,計測データの処理のための謝金を使用する。
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Research Products
(4 results)