2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570095
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中川 将司 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (00212085)
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Keywords | 視細胞 / 光信号伝達系 / 進化 / ホヤ / 発現プロファイル |
Research Abstract |
本研究の目的は、脊椎動物にもっと近縁な動物ホヤの視細胞内光信号伝達系を明らかにし、進化の過程で脊椎動物型視細胞内光信号伝達系がどのように確立されたのかを考察することである。本研究では、視細胞特異的にGFPを発現するTgホヤ幼生から、視細胞を単離し、発現プロファイルを作成することにより、光信号伝達系に関与する遺伝子を同定する。 昨年度見出した細胞分離の方法では、偶に蛍光を発する単一の視細胞が見られたものの、その殆どは他の細胞がくっついた塊となっており、この条件では、視細胞だけを回収するのは極めて難しかった。また、自家蛍光を発する筋細胞を間違えて採取してしまう可能性もあった。そこで、2段階方式で、細胞を分離する方法を考えた。幼生を短時間コラーゲン処理することで、胴部と尾部とを分離させ、胴部だけを回収した。胴部からの細胞分離条件も再検討し、処理温度や処理時間をコントロールすることで、効率よく細胞を分離することができた。 細胞採取方法も改良した。3次元マニピュレータを取り付け、顕微鏡に高感度カメラを設置した。既存の小型電動ピペッタでは、海水を吸い過ぎるとモータ部に海水が浸透しマイクロモータが働かなくなるトラブルが相次いだ。サーバ部分が大きい試作中のピペッタと交換し、この問題も解決した。 今年度末に漸く、視細胞を採取することができ、10個程度の細胞からRNAを抽出し、SMATer Kitを用いて、cDNAを合成した。それを鋳型として、PCRを行ったところ、opsin遺伝子が含まれていることが分かった。 脊椎動物の視細胞でエフェクタとして働いているPDEについてもPCRを行った。1, 4B, 9型PDE遺伝子が発現していることが確認された。しかし、プライマの組み合わせによって、増幅率にバラツキが出たため、現時点ではどのタイプのPDE遺伝子が視細胞でメインに発現しているのか不明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
交互に学生実験を担当していた教員が転出し、本年度は一人で学生実験を担当することとなった。その為、ホヤのシーズンである4-6月は、自分自身では殆ど実験はできず、本研究に従事してくれる卒研学生に実験方法を教えるだけで終わった。 例年なら10月中旬からホヤのシーズンが始まるが、今年度は遅く、しかも例年に比べて発生が良かった為、細胞分離条件の検討や、細胞採取方法の検討に時間が掛かった。年度末に漸く、視細胞の単離することに成功し、それらの細胞からcDNAを合成することができたが、発現プロファイル作成までには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
PCRでの遺伝子発現解析では、結果にかなりバラツキがあり、定量的解析が難しいことが判明した。神戸大との共同研究で、次世代シーケンサを用いて、発現プロファイル解析を行う。エフェクタの同定だけでなく。どのタイプの小胞型トランスポータ遺伝子が視細胞で発現しているかを調べることで、神経タイプも明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学生実験を分担していた助教が転出したことにより、研究に従事できる時間が限られ、さらに、本年度は例年になくホヤの調子が悪く、研究が思うように進まなかった。その結果、細胞分離の条件、細胞採取方法が、確立するまで、予想以上に時間が掛かり、本年度予定であった遺伝子発現解析が次年度に先送りになったため。 次年度は、神戸大との共同研究で、次世代シーケンサを用いてホヤ幼生視細胞の遺伝発現解析を行う。次世代シーケンサ用試料調整キット等の試薬類、及び出張先でデータ整理するためのノートパソコンを購入する。さらに出張費及びホヤの餌代として使用する。
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